日本歯科保存学雑誌
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56 巻 , 2 号
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原著
  • 竹中 彰治, 大墨 竜也, 若松 里佳, 寺尾 豊, 大島 勇人, 興地 隆史
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:リステリンはバイオフィルム中の細菌に対して短時間で膜傷害効果を示すと報告されているが,溶剤としてエタノールを含むため粘膜刺激性の強さが短所であった.本研究ではこの点の改良を意図して開発されたノンアルコールタイプのListerine Zeroについて,Streptococcus mutansバイオフィルムに対する浸透性および殺菌能を評価した.材料と方法:Listerine Zero(Z群),リステリンフレッシュミント(F群)およびグルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(Peridex, P群)を被験洗口液とし,陰性対照として緩衝液(C群)を用いた.また,S. mutansバイオフィルムはガラスベースディッシュを用いて24時間,嫌気培養により形成した.各洗口液の浸透性は,Calcein-AMで蛍光染色されたバイオフィルムに各洗口液を作用させた後,共焦点レーザー顕微鏡により蛍光消失のタイムラプス解析を行い測定した.また,生死鑑別(Live/Dead)蛍光染色法およびプレートカウント法を用いて,各洗口液の殺菌効果を比較した.結果:バイオフィルムの最大厚みは32μmであった.各洗口液とも50%蛍光消失までの時間(T50)はバイオフィルムの厚みと正の相関関係があり,それぞれy=2.012x,決定係数(R2)=0.992(Z群), y=1.992x, R2=0.986(F群), y=10.579x, R2=0.994(P群)であった.浸透速度はP群が他群より有意に低値であったが(共分散分析,p<0.05),Z群,F群間には有意差はなかった(同,p>0.05).各洗口液30秒作用後にLive/Dead染色法にてPropidium Iodide(PI,死菌のマーカー)陽性率を比較したところ,F群,Z群は99.8±0.1%を示したがP群では41.4±5.9%であった.さらに,30秒作用後の生菌数をプレートカウント法で求めたところ,すべての洗口液群がC群と比較して有意に少数(Dunnett test, p<0.05),またF群およびZ群はP群より有意に少数であったが(Steel-Dwass test, p<0.05),F群とZ群の間に有意差はなかった(同,p>0.05).結論:Listerine Zeroおよびリステリンは,少なくとも32μm以下の厚みのS. mutansバイオフィルムに対して同等の膜傷害効果と殺菌効果を与えた.また,Listerine Zero,リステリンともグルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液と比較して有意に高いバイオフィルム浸透性と殺菌効果を示した.
  • 小西 秀和
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:鋳造ポストの除去処置は困難であり,除去後に歯根破折などの臨床トラブルが起こるケースが日常的に少なくない.このことから,患者に快適で安全・安心な歯科医療を提供するためにも,修復物除去の時間短縮(Speedy),除去の確実性(Sure),患者への最小限の侵襲および安全性(Safe)を考慮する必要があると考えられる(3S).そこで本研究では,より容易に3Sをクリアできる鋳造ポストの除去方法を探索する目的で,過去の基礎研究の結果を踏まえ,メタルコア(鋳造ポスト)の除去処置に関して,従来型のポストコアリムーバー(以下,PR, YDM)とその改良型を用いて臨床的な比較検討を行った.対象と方法:王喜歯科医院において,以下の条件で鋳造ポストを除去した患者35名の,除去歯39本を対象歯とした.鋳造ポストを従来型PRで除去した群をRC群,および改良型PR(従来型PRに把握力を緩衝調節できる板バネを一枚のみ付与した構造)で除去した群をRSC群と定義した.RC群およびRSC群両群とも,鋳造ポストの除去対象歯の唇(頬)側面と舌(口蓋)側面のコアの金属マージン部に,FGジェットカーバイドバー#1970(松風)を用いてポストに達する深さまで切れ込みを入れた.さらに二種類のPRの先端の嘴部をおのおのこの二カ所の切れ込みに適合させて,鋳造ポストの方向(歯の中心方向)へ少しずつPRの把握力を加えながら,ポストを脱離させ除去した.その際に,鋳造ポスト除去に要した時間および鋳造ポストの根管内におけるポスト部の長さ,ポスト除去処置前後の対象歯の状態を臨床的に比較評価した.結果:来院患者の鋳造ポスト除去は,上記のいずれかの方法でもすべてのケースにおいて5分以内に除去できた[RC群:18/18, RSC群:21/21(単位:本)].PRの種類別の鋳造ポストの除去時間の平均は,RC群が103±77秒,RSC群が99±69秒で,除去した鋳造ポストの根管内での平均の長さは,RC群5.9±1.8 mm, RSC群5.7±1.6mmであり,ともに両群間で有意差はなかった(Mann-Whitney U test, p≧0.05).また細いFGジェットカーバイドバー#1970を用いたことにより,除去時の歯質削減の侵襲を可及的に小さくできたと思われる.さらに鋳造ポスト除去時に二種類のPRを用いたことにより,除去歯の歯根破折,自発痛・打診痛の発現,歯周ポケットの形成,歯の動揺はほとんど生じなかった.とりわけ,除去処置前と除去処置から1カ月以上経過後の鋳造ポスト除去歯の状態を比較すると,対象歯の打診痛およびプロービング深さ,歯の動揺の症状が有意に安定していた(Wilcoxon signed rank test, p<0.05).結論:以上より二種類のPRは,ともに臨床的にも迅速・確実・安全(3S)に鋳造ポストを除去できる可能性が示唆された.さらに,改良型PRのほうが従来型PRに比較して,除去時間がわずかに短い傾向にあることが経験された.
  • 庵原 耕一郎, 村上 真史, 武井 佳史, 堀部 宏茂, 栗田 賢一, 中村 洋, 中島 美砂子
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:近年,骨髄・脂肪などの間葉系幹細胞を用い,さまざまな疾病に対する再生医療の臨床研究が行われているが,歯髄幹細胞を用いた再生医療の臨床研究における安全性試験の報告はいまだみられない.幹細胞を臨床研究で用いるためには「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に従って臨床グレードの幹細胞を製造加工する必要がある.よってわれわれは,Good Manufacturing Practice (GMP)準拠で標準作業手順書(Standard Operating Procedure, SOP)に基づき歯髄幹細胞を製造加工し,この細胞の品質と安全性を厳密に評価した.材料と方法:ヒト歯をGMP準拠細胞加工施設アイソレータ内に輸送し,歯髄組織から酵素消化法にて歯髄細胞を分離・培養後,granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)濃度勾配を利用した膜遊走分取法により歯髄幹細胞を分取した.分取後7,15,20代目まで継代し,プログラムフリーザーを用いて凍結した.品質検査として,歯輸送液,初代培養の細胞培養液および継代7代目において,細菌,マイコプラズマ,エンドトキシン,ウイルス検査を行った.また,細胞の表面抗原マーカーの発現率をフローサイトメトリーにて測定した.安全性検査として,NOD/SCIDマウスまたはKSNヌードマウスを用いて,精巣および皮下に15代目歯髄幹細胞を移植して造腫瘍試験を行った.また,ヒト歯髄幹細胞(20代目)を用いて,核型解析をQバンド解析法にて行った.結果:アイソレータ内で分取し,7代目まで増幅し,凍結保存した歯髄幹細胞の生存率は80%以上であり,表面抗原の発現をみると,CD29, 44, 73, 90, 105陽性率は95%以上で,CD31は陰性であり,幹細胞・前駆細胞が多く含まれると考えられた.また,各種感染は認められず,エンドトキシンは1.0(pg/ml)以下であった.さらにマウスに腫瘍形成の所見はみられず,染色体異常・核型異常もみられなかった.結論:GMP準拠にて製造加工したヒト歯髄幹細胞の品質と安全性を明らかにした.今後,この細胞を用いた歯髄再生治療の臨床研究を行い,安全性・有効性を確認することにより,新たな歯髄炎治療法の実用化に進展する可能性が期待できる.
  • 大森 かをる, 常盤 珠美, 秋本 尚武, 英 將生, 宮内 貴弘, 桃井 保子
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 2 号 p. 130-137
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:漂白直後および漂白中に生じる象牙質知覚過敏の発生率は,軽度のものを含めると55〜75%との報告があり,エナメル質に存在するエナメル葉や微小亀裂がその原因の一つとして考えられている.本研究の目的は,新規に開発されたリン酸カルシウム系知覚過敏抑制材をメーカー指示に従って塗布した際の,エナメル質微小亀裂の封鎖性を観察し,知覚過敏抑制材を併用した際の漂白効果に及ぼす影響について検討することである.材料と方法:実験に供した材料は,知覚過敏抑制材ティースメイトディセンシタイザー(クラレノリタケデンタル,TMD),有髄歯の漂白材として松風ハイライト(松風),松風ハイライトシェードアップ(松風)である.亀裂の存在するヒト抜去前歯に松風ハイライトで通法どおりにオフィスブリーチを行った後に,TMDを30秒間擦り込み,実体顕微鏡および走査電子顕微鏡で亀裂の封鎖性を観察した.また,亀裂の存在する前歯の半分にTMDを擦り込み,TMD塗布面と非塗布面に,それぞれの面を被覆する形状のホームブリーチ用トレーを作製し,松風ハイライトシェードアップで総計28時間ホームブリーチを行い,分光式色彩計(Spectro Color Meter SE-2000,日本電色)を用いて,明度5のグレー背景色におけるCIEL*a*b*を算出し,色差(ΔE*ab)を比較した.ΔE*abの結果は,Tukeyの多重比較(α=0.05)で統計処理を行った.結果:走査電子顕微鏡により,エナメル質微小亀裂へのTMDの封入が観察された.また,TMD塗布後にホームブリーチを行った面の術前,術後の色差ΔE*abは,11.59であった.一方TMD非塗布面の術前,術後の色差ΔE*abは12.48であり,TMDの塗布面と非塗布面の間の色差に,有意差は認められなかった.結論:リン酸カルシウム系知覚過敏抑制材は,エナメル質微小亀裂を封鎖するとともに,漂白効果に影響を及ぼさなかったことから,漂白前や漂白中の併用への可能性が示唆された.
  • 淺井 知宏, 間 奈津子, 藤井 理絵, 森永 一喜
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:歯科治療に頻用されている歯科用セメント,覆髄材ならびに仮封材には,口腔内常在菌の窩洞内への侵入を防止し,窩洞内を無菌的に保つために抗菌性を保有することが望ましいといわれている.本研究では,臨床で頻繁に使用される仮封材の口腔内細菌に対する抗菌性について検討を行った.材料と方法:仮封材には,酸化亜鉛ユージノール製剤(ネオダイン-α,ネオ製薬工業),水硬性仮封材(キャビトンEX,ジーシー),タンニン・フッ化物合剤配合水硬性仮封材(ハイ-シール,松風),高分子系仮封材(プラストシールノーマル,日本歯科薬品),光重合型レジン系仮封材(エバダインプラス,ネオ製薬工業)の計5種類を用い,これらを被験材料とした.供試菌株として,Porphyromonas gingivalis ATCC 33277, Fusobacterium nucleatum TDC 100, Parvimonas micra JCM 12970, Streptococcus mutans Ingbritt, Streptococcus sanguinis ATCC 10580を使用した.BHI寒天培地上の被験試料周囲に発現する阻止円の半径(cm)を計測し,各仮封材の被験菌種に対する抗菌性を試料間で比較検討した.統計解析はKruskal-Wallis testを用い,5%の有意水準で解析を行った.成績:ネオダイン-αはすべての菌種において抗菌性が認められた.キャビトンEXはF. nucleatumのみに抗菌性が認められた.ハイ-シールはP. micra以外のP. gingivalis, F. nucleatum, S. mutans, S. sanguinisに抗菌性が認められた.プラストシールはP. gingivalisのみ抗菌性が認められた.エバダインはいずれの菌種に対しても抗菌性が認められなかった.結論:本研究では,各種仮封材における抗菌性に差異が認められたが,仮封材成分の抗菌性によるものであることが示唆された.
  • 黄地 智子, 初岡 昌憲, 恩田 康平, 野村 雄司, 横田 啓太, 松田 有之, 津谷 佳代, 畑下 芳史, 吉川 一志, 山本 一世
    原稿種別: 原著
    2013 年 56 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:近年MIの概念に基づいた治療が一般的になり,コンポジットレジン(以後,CR)による修復治療が増加してきている.それに伴い新しい照射器が多く開発・市販されており,試作高出力LED光照射器VL-10(モリタ製作所,以後,VL)が開発された.この試作照射器は,波長を1波長のヘッドと2波長のヘッドの2つに付け替えて使用でき,出力においても高出力と通常出力の設定ができる.本研究では,このVLの波長および照射出力がCR修復時のボンディング材の接着強さに与える影響について,引張接着強さの測定から従来型LED光照射器であるペンキュア(モリタ製作所)と比較し,検討を行った.材料と方法:ウシ抜去歯に#600の耐水研磨紙を用いて象牙質平坦面を作成し,象牙質被着面とした.被着面積を直径3.0mmに規定し,クリアフィルメガボンド(クラレノリタケデンタル)を用いて,製造者指示に従い歯面処理を行った.ボンディング材塗布後,下記の条件で光照射を行った.(1)Control:ペンキュア10秒 (2)VL-SW1s:VLの1波長高出力1秒 (3)VL-SW2s:VLの1波長高出力2秒 (4)VL-SW3s:VLの1波長高出力3秒 (5)VL-SW10s:VLの1波長通常出力10秒 (6)VL-DWls:VLの2波長高出力1秒 (7)VL-DW2s:VLの2波長高出力2秒 (8)VL-DW3s:VLの2波長高出力3秒 (9)VL-DW10s:VLの2波長通常出力10秒 その後,クリアフィルAP-X(クラレノリタケデンタル,シェードA3)を充填し,XL3000 (3MESPE)にて光照射を行った.24時間・37℃水中保管した後,万能試験機(IM-20,インテスコ)を用いてクロスヘッドスピード0.3mm/minにて接着強さを測定した.各照射条件につき8試料とした.なお統計処理は,一元配置分散分析およびTukeyの検定を行った.結果:測定結果はControl:17.9±3.3, VL-SW1s:11.8±3.8, VL-SW2s:16.0±3.1, VL-SW3s:18.2±3.8, VL-SW10s:20.5±4.7, VL-DW1s:16.5±4.4, VL-DW2s:18.4±3.5, VL-DW3s:19.7±2.0, VL-DW10s:20.4±2.9であった.VL-SW1sを除き,ほかの照射条件ではControlと比較して有意な差は認められなかった.特にVL-SW3sとVL-DW3sおよびVL-DW2sはControlと同等の接着強さを示した.結論:新規高出力LED照射器であるVLは,高出力の設定で従来のLED照射器と比較して短時間で十分な接着強さが得られることが示された.
症例報告
  • 牛尾 悟志, 松本 典祥, 水上 正彦, 泉 利雄, 諸冨 孝彦, 春名 千英子, 福田 泰子, 逸見 晃司, 板家 圭祐, 阿南 壽
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 56 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー
    目的:歯内-歯周疾患により惹起された歯肉腫脹の報告は多数認められるが,歯内-歯周疾患に伴う下眼瞼の腫脹に関する報告はほとんど認められない.今回,眼窩下方向へ炎症が波及した歯内-歯周疾患の診断および治療における,歯科用コーンビームCT (CBCT)の有用性について報告する.症例:患者は52歳男性.歯肉膿瘍と下眼瞼の腫脹を主訴として来院した.臨床症状とCBCTの画像により,上顎左側側切歯の急性化膿性根尖性歯周炎および歯内-歯周病変と診断した.また,根尖部付近のフェネストレーションが眼窩下方向への炎症の拡大に関与している可能性が推察された.そこで,CBCTの3D画像を基に,患歯の感染根管治療を施した.3カ月後,臨床症状は消失し,根尖周囲の透過像は観察されなかった.結論:歯肉膿瘍と口腔外の腫脹を認める歯内-歯周疾患の診断および治療において,CBCTの使用はきわめて有効であることが示唆された.
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