日本歯科保存学雑誌
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エナメル質-12%金銀パラジウム合金間のレジンセメントの接着性
初岡 昌憲恩田 康平黄地 智子大前 正範岩田 有弘野津 繁生吉川 一志山本 一世
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2013 年 56 巻 4 号 p. 360-369

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抄録

目的:接着性ブリッジを想定し,レジンセメントの物理・機械的性質およびエナメル質-12%金銀パラジウム合金間の接着性について,3点曲げ試験,引張接着強さ(TBS)の測定および破断面の観察から検討した.材料と方法:MMA系のスーパーボンドC&B (SB),マルチボンドII(MB), CR系のレジセム(RC),セルフアドヒーシブレジンセメントのリライエックスユニセムクリッカー(UC),クリアフィルSAルーティング(SL),マックスセム(MC)を使用した.12%金銀パラジウム合金を鋳造し合金被着体,またウシ歯を研磨しエナメル質被着面とした.製造者指示および15秒間リン酸エッチングを行った後,レジンセメントでエナメル被着面に合金被着体を接着した.また,エナメル被着面に,製造者指示に従い合金被着体を接着した.24時間37℃水中保管後,ならびに5-55℃,5,000回のサーマルサイクル(TC)負荷後にTBSを測定し破断面を観察した.結果:3点曲げ試験において最大応力は,SBで71.8MPa, MBで70.8MPa, RCで124.6MPa, UCで88.8MPa, SLで109.7MPa, MCで84.0MPaであった.TBSにおいてSBはTC負荷により低下が認められた.UC, SL, MCは製造者指示どおりではTBSが低下したが,リン酸エッチングにより向上した.MB, RCのTBSの変化はほとんど認められなかったが,リン酸エッチングによる接着性の向上が破断面の観察から認められた.結論:セルフアドヒーシブタイプ・セルフエッチングプライマータイプのいずれのレジンセメントにおいても,エナメル質にリン酸エッチングの追加処理を行うと接着性が向上した.またオートミキシングチップを使用するレジンセメントは,練和を行うレジンセメントと比較してTC負荷による劣化が小さかった.

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