日本歯科保存学雑誌
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シングルファイル法とマルチファイル法における湾曲根管に対する拡大形成の切削特性に関する研究
松田 浩一郎新井 恭子北島 佳代子五十嵐 勝
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2013 年 56 巻 6 号 p. 526-536

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抄録

目的:本研究は,1本のファイルを往復回転運動で使用するNi-TiロータリーファイルReciproc(RE)とテーパーの異なる複数本を正回転で使用するNi-TiロータリーファイルProTaper(PT),および複数本を手用で使用するステンレススチール製Kファイル(SSK)を用い,拡大形成法の異なるファイルの切削特性を知ることを目的として行った.材料と方法:実験には27個の透明樹脂製湾曲根管模型を使用した.根管拡大したときの作業時間,押し込み荷重,引き抜き荷重を計測した.拡大前と後の根管の重ね合わせ画像を作製し,根管形態変化を比較した.拡大形成中に出た切削片の大きさを,画像解析ソフトで計測した.すべてのデータで統計解析を行った.結果:総拡大形成時間において,3種類のファイル間すべてで有意差がみられた.REが最も短く,SSKはNi-Tiファイルの6倍以上であった.押し込み荷重と引き抜き荷重ともにPT,RE,SSKの順に有意に小さく,PTの押し込み荷重は233±58gf,引き抜き荷重は127±36gf,REの押し込み荷重は370±92gf,引き抜き荷重は353±58gfであった.拡大形成後の根管形態変化は,SSKでは根管湾曲の外側と根管上部の内側に削り残しがあり,根管の直線化傾向がみられたのに対し,Ni-Tiファイルでは根管の全周にほぼ均等な切削が観察された.拡大形成中の根尖部への切削片の詰め込みやステップ形成は,SSKで生じたがREとPTではみられず,切削片の大きさはNi-Tiファイルのほうが大きかった.結論:以上の結果から,Ni-Tiファイルは湾曲根管の拡大形成を短時間に行うことができ,根管のほぼ均等な拡大形成ができるファイルであることが示された.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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