日本歯科保存学雑誌
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当科における頭頸部がん患者に対する口腔機能管理について
中村 亨山本 俊郎丸山 日登美岸野 加奈美久保 惠津子赤松 佑紀西垣 勝大迫 文重雨宮 傑坂下 敦宏金村 成智
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2013 年 56 巻 6 号 p. 537-543

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抄録

目的:近年,がん患者の口腔に起こるトラブルを予防ならびに軽減するために,がんセンターや大学病院をはじめとしたがん拠点病院では,歯科によるがん治療への介入が勧められている.京都府立医科大学附属病院歯科(以下,当科)では,2011年7月から口腔ケアサポートチームを編成し,頭頸部がん患者のがん治療後の合併症を低下させるために活動している.そこで本報告では,当科の口腔ケアサポートチームの活動状況について報告する.方法:2011年7月1日から2012年12月31日までに当院耳鼻咽喉科から依頼のあった頭頸部がん患者を対象とし,患者背景,介入件数,合併症および介入時の口腔機能管理について後ろ向き観察研究を行った.成績:頭頸部がん症例102例(男性81名と女性21名),平均年齢は64.1歳であった.原疾患は,口腔がん29例,下咽頭がん24例,中咽頭がん18例,喉頭がん8例,原発不明がん6例,上咽頭がん5例,鼻腔がん4例,唾液腺がん4例,およびその他4例であった.耳鼻咽喉科での治療法は,半数近くが手術療法であり,次に化学療法と放射線治療の併用となっていた.口腔ケアサポートチームの介入時期は,がん治療前からの介入が8割近くを占めた.各月の平均介入件数は6件,合併症率は8.8%であった.口腔機能管理は,口腔衛生処置(歯または口腔粘膜のケア)が全症例に行われ,次に抜歯などの外科処置37例(35.3%),補綴処置(義歯,冠)16例(15.7%),保存修復処置(コンポジットレジン充填,インレー修復)5例(4.9%),歯内処置(抜髄処置,感染根管処置)5例(4.9%)およびう蝕予防処置(フッ化物歯面塗布)5例(4.9%),口腔機能訓練1例(1.0%)であった.結論:紹介されたほぼすべての患者は,口腔機能の管理が必要な状態であった.口腔ケアサポートチームが介入することで大きな有害事象は認められなかった.今後,さらなる検討を行い,口腔管理における歯科疾患に対する適切な治療方針ガイドラインを確立することが必要であると考える.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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