日本歯科保存学雑誌
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TNF-α刺激によるMMP-3産生に及ぼすRac1の影響
小正 玲子合田 征司吉川 一志池尾 隆山本 一世
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2013 年 56 巻 6 号 p. 544-550

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抄録

目的:歯髄組織ではう蝕の進行に伴い,TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され,歯髄炎が惹起される.刺激を受けた歯髄組織では細胞外マトリックス分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)などが産生され,歯髄組織を破壊し病態が進行する.歯髄炎の発症機序を解明することは,歯髄の保存のために重要であると考える.small G proteinは,炎症に深くかかわっているタンパク質として知られている.そこで今回,ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるTNF-α刺激によるMMP-3産生に対するsmall G proteinの関与について検討した.材料と方法:実験については,大阪歯科大学医の倫理委員会において承認を得た(大歯医倫110751号).ヒト歯髄由来線維芽細胞を初代培養し以下の実験に用いた.ヒト歯髄由来線維芽細胞をα-MEM(serum-free)にて培養後,TNF-α(0,5,10,20,50,100ng/ml)およびRac1 inhibitor(NSC23766)を添加し,24時間共培養を行った.刺激終了後,上清中のMMP-3の産生およびp38のリン酸化をウェスタンブロット法にて検討した.また,培養上清を1mg/mlのgelatinを加えたSDS-PAGEに供し電気泳動を行い,Comassie blueにて染色後Destain bufferにて脱染色し,ザイモグラフィー法にて検討した.結果:ヒト歯髄由来線維芽細胞においてTNF-α濃度依存性にMMP-3の産生は増強したが,MMP-2の産生に影響は認められなかった.次に,TNF-α刺激により増強したMMP-3の産生およびp38のリン酸化は,Rac1阻害剤であるNSC23766により有意に増強した.結論:以上より,ヒト歯髄由来線維芽細胞においてTNF-α刺激によるMMP-3の産生はsmall G proteinのRac1が関与していることが示唆された.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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