日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
大臼歯咬合面窩洞の残存歯質厚さとレジン接着性の影響
吉川 孝子SADR Alireza田上 順次
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 57 巻 1 号 p. 67-72

詳細
抄録

 目的 : コンポジットレジンの接着強さは, 平坦面の象牙質被着体に対して評価されることが多いが, その平坦面被着体のほとんどは咬合面象牙質であり, 象牙質側壁面に対するレジンの接着強さについての報告はほとんど認められない. そこで本研究では, 2種のボンディングシステムを使用したレジンの, 接着強さに及ぼす側壁象牙質の部位の違いの影響について検討した.
 材料と方法 : ヒト大臼歯の咬合面エナメル質を削除した, 象牙質平坦面に3×5×4mmのI級窩洞を形成した後, 窩洞形成後に頬舌側窩壁を取り除いた近心平坦面と遠心平坦面の側壁平坦面試片を1歯から各2試料作製した. これらの側壁平坦面を2種の接着システム, Clearfil Mega Bond (クラレノリタケデンタル), Clearfil tri-S Bond (クラレノリタケデンタル) を用い製造者指示に従い処理した後, 処理面にZ100 (3M ESPE) のハイブリッドコンポジットレジンを縦7mm, 横3mm, 高さ2mmに築盛した. 実験用ハロゲンランプ電圧可変光照射器 (ジーシー) を用い, 出力600mW/cm2で40秒間光照射を行いレジンを重合硬化させた. 37°C暗所水中に24時間保管後, レジン-象牙質界面に垂直に, 界面の面積約1mm2の試片を切り出し, 残存歯質厚さ (RTT) を測定した. これら試片の両端を試験装置にシアノアクリレートで接着させ, 万能試験機 (EZ test, 島津製作所) に装着して, クロスヘッドスピード1mm/minで微小引張り接着強さ (μTBS, MPa) を測定した. 測定値 (n=6) は, Bonferroni testを用いて統計処理を行った. 接着強さはRTTにより, RTT<2mm, RTT≧2mmの2群に分けた. 試料は各群につき6試料作製した. 得られた測定値は, Bonferroni testを用いて統計処理を行った.
 成績 : Clearfil Mega Bondは, RTTが2mm未満, 2mm以上のどちらにおいても接着強さに有意差は認められなかった (p>0.05). 一方, Clearfil tri-S Bondは, RTT 2mm以上のほうがRTT 2mm未満より接着強さが有意に高くなった (p<0.05).
 結論 : ツーステップセルフエッチングシステムのClearfil Mega Bondの接着強さは, 残存歯質厚さの影響を受けなかったが, ワンステップセルフエッチングシステムのClearfil tri-S Bondは残存歯質厚さの影響を受けることが判明した.

著者関連情報
© 2014 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top