日本歯科保存学雑誌
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原著
自己接着フロアブルコンポジットレジンの象牙質に対する接着強さ
田沼 哲也小竹 宏朋日下部 修介堀田 正人
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2014 年 57 巻 1 号 p. 73-82

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抄録

 目的 : 象牙質に対する良好な接着を得るためには, エッチングによりスミヤー層を除去し, プライミングとボンディングにより脱灰象牙質にレジンが浸透し, 重合硬化することが必要であると広く認識されている. しかし, これらの処理は時間を要し, 複雑でテクニックセンシティブであるため, 簡単な臨床操作のコンポジットレジン修復システムが強く望まれている. 歯面接着処理が全く不要である自己接着型コンポジットレジンは究極の性能であり, 特に高齢者や小児歯科には有用で, コンポジットレジン修復の新しいアプローチであることは明らかである.
 そこで, まず裏層材料として臨床応用が可能ではないかと考え, 既存のフロアブルコンポジットレジンやワンステップボンディング材を利用して流動性の高い自己接着フロアブルコンポジットレジンを試作し, ヒト象牙質に対する接着性の評価を行った.
 材料と方法 : 研削象牙質とスミヤー層除去象牙質に対する試作自己接着フロアブルコンポジットレジン (以下, 自己接着レジン) の接着強さを測定した. さらにこの試作レジンを微振動させて充填し, 象牙質に接着させたものについても測定に供した. 37°C, 24時間, 蒸留水中に浸漬後, 引張り接着強さを測定し, 各試作グループの平均値を求め評価した.
 成績 : その結果, ビューティフィルフローF02 (90, 80 wt%) とビューティボンド (10, 20 wt%) を用いた試作自己接着レジンの接着強さの平均値は, 2MPa以下と非常に低いものであった. 一方, 溶媒成分を除去したボンドフォースにフィラーを50 wt%混入して作製した自己接着レジンの接着強さの平均値は5.26MPaを示し, 現在アメリカで市販されているFusio Liquid Dentinの5.62MPaと同程度であった. さらに, 試作した自己接着レジンが水分に触れたときのpHは3.0以下であった. また, 被着面のスミヤー層を除去した後の各種試作自己接着レジンの接着強さは増加傾向を示し, 特にボンドフォースを使用した自己接着レジンの接着強さの平均値は6.49MPaを示した. さらに, 溶媒成分を除去したクリアフィルトライエスボンドを使用した自己接着レジンを接着させるときに, 微振動を与えた場合の接着強さの平均値は6.55MPaを示した.
 結論 : 以上のことから, 市販の2種類のワンステップボンディング材より作製した試作自己接着フロアブルコンポジットレジンの接着強さは十分臨床応用できることが示唆された.

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