日本歯科保存学雑誌
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原著
動的荷重がMODBハイブリッドセラミックアンレー修復の微少漏洩に及ぼす影響
山田 正柵木 寿男奈良 陽一郎
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2014 年 57 巻 1 号 p. 83-90

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抄録

 目的 : 審美的な歯冠修復は, 患者が願う治療成果のなかでもとりわけ強いニーズとして挙げることができ, その対象は限局した症例から広範な症例まで多種多様になっている. 本研究の目的は, 機能咬頭を被覆するアンレー修復に焦点を絞り, 動的荷重がハイブリッドセラミックアンレー修復の微少漏洩に及ぼす影響について検討することである.
 材料と方法 : ヒト抜去健全下顎大臼歯に規格化MODB窩洞を形成した. その後, 象牙質レジンコーティング, 印象採得, 作業用模型作製後, Estenia C & B (Kuraray Noritake Dental) を用いてハイブリッドセラミックスアンレーを作製した. 合着操作は, 窩洞内の象牙質レジンコーティング部にはClearfil Ceramic Primer (Kuraray Noritake Dental) を, エナメル質切削面にはED PrimerII (Kuraray Noritake Dental) を用いて, 一方, 修復物内面にはサンドブラスト, 酸処理後にClearfil Ceramic Primer処理を行い, Clearfil Esthetic Cement (Kuraray Noritake Dental) を用いて合着させた. その後, 修復試料を動的荷重負荷群 (以後, (+) 群) と非負荷群 (以後, (−) 群) とに区分し, (+) 群に対しては複合機能試験機を用いて37°C水中における16.0kgf×300,000回 (90回/分) の繰り返し動的荷重を負荷した. 次いで, 全試料を1%メチレンブルー水溶液中に1時間浸漬後, 歯軸 (植立軸) と平行かつ舌側壁窩縁に直交する面によって縦切断し, 中心窩直下の接着面を有する厚さ1.05mmの板状試片を切り出した後の, 近・遠心部2試料の舌側壁 (以後, L壁) と頬側歯肉側壁 (以後, G壁) の色素浸透状態を200倍の実体顕微鏡を用いて判定し, より色素浸透している試料を代表値とした. 得られた結果は, Mann-WhitneyのU検定とWilcoxonの符号付順位検定による分析を行った.
 成績 : 分析の結果, 動的荷重の有無は, G壁漏洩に対しては有意な影響を与えないものの, L壁漏洩に対しては有意な影響を与え, さらにその漏洩は動的荷重 (+) 群が (−) 群より危険率1%で有意に大きいことが判明した. また (+) 群においてはL壁漏洩がG壁漏洩より危険率5%で有意に大きいものの, (−) 群においては両窩壁の漏洩に有意差は認められないことが判明した.
 結論 : 動的荷重の有無はL壁漏洩の発現に大きな影響を与えるものの, G壁漏洩には影響を与えない. また, L壁とG壁との違いによる漏洩の差異は動的荷重が負荷された場合のみ認められ, 負荷されない場合には認められない.

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© 2014 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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