日本歯科保存学雑誌
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症例報告
植込み型電子機器装着者に電気的根管長測定と超音波洗浄を行った2例
工藤 義之櫻井 秀人岡田 伸男野田 守中居 賢司
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2015 年 58 巻 4 号 p. 331-337

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抄録

 目的 : 植込み型電子機器装着患者の電気的根管長測定と根管内超音波洗浄時の不整脈惹起作用について, 多チャンネル高分解能心電計 (ドリームECG) を用いて検討することを目的とした.
 方法 : 根管治療のために超音波洗浄器ならびに電気的根管長測定器の使用が必要であったペースメーカー (PM) 装着者1名, 植込み型除細動器 (ICD) 装着者1名を対象とした. 治療前に循環器内科専門医と歯科麻酔専門医による十分な問診を行い, 4週間以内にICD作動, 致死的不整脈, 心筋虚血, 心不全 (NYHA Ⅲ以上) がないことを確認した. その後, ドリームECGを装着して治療中の循環器動態を測定した. 治療には循環器内科専門医と歯科麻酔専門医が立ち会い, 不測事項発生時への十分な対応のためにAEDや救急薬品をチェアーサイドに配置した.
 症例1 : 54歳男性, ICD装着例. 歯科診断 : 下顎左側第一大臼歯慢性化膿性根尖性歯周炎.
 症例2 : 80歳女性, PM装着例. 歯科診断 : 上顎左側第一大臼歯慢性化膿性根尖性歯周炎.
 根管治療中に電気的根管長測定 (RootZX, Morita) ならびに歯科用多目的超音波治療器 (OSADA Enac 10W, Osada) での根管洗浄を行った.
 成績 : いずれの症例でも, ドリームECGで若干のノイズ増加を認めたが, 致死的不整脈, 脱分極指標および再分極指標で異常を認めなかった.
 結論 : PMあるいはICD装着患者において, 十分な問診, 歯科治療時の適切な循環動態の把握により, 超音波治療器・電気的根管長測定器を用いた場合でも安全な歯科治療遂行の可能性が示唆された. また, 歯科治療中の循環動態の把握にドリームECGが有効であると思われた.

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