日本歯科保存学雑誌
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原著
唾液汚染されたセラミックスに対する表面処理の影響
—表面自由エネルギーと接着強さからの検討—
石井 亮高見澤 俊樹辻本 暁正大内 元崔 慶一村山 良介宮崎 真至日野浦 光
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2016 年 59 巻 2 号 p. 169-177

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抄録

 目的 : 唾液汚染されたセラミックスへの表面処理がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について, セラミックス表面の表面自由エネルギー, レジンセメントとの接着強さ測定およびSEM観察を行うことによって検討した.
 材料と方法 : 実験に供試したセラミックスブロックは, IPS e. max CAD (Ivoclar Vivadent, EM) とした. レジンセメントは, Multilink Automix (Ivoclar Vivadent, MA) を, セラミックスプライマーはMonobond Plus (Ivoclar Vivadent, MP) を用いた. また, 唾液汚染後のセラミックスに対する表面処理材として, Total Etch (Ivoclar Vivadent, TE) およびIvoclean (Ivoclar Vivadent, IC) を用いた. 表面自由エネルギー測定用試片の製作に際しては, 製造者指示に従って焼成したEMに対してIPS Ceramic Etching Gel (Ivoclar Vivadent, CE) を20秒間塗布したものを, Control試片として用いた. また, Control試片を37°Cヒト唾液中に浸漬したものを汚染被着面とし, この被着面に対してTE, ICおよびCE処理を行った試片に対して表面自由エネルギーの測定を行った. 接着試験に際しては, 表面自由エネルギー測定用試片と同様に調製したセラミックス被着面に対して, レジンセメントを塡塞した. これらの試片について, 37°C精製水中に24時間保管したものあるいは24時間保管後に温熱負荷を10,000回あるいは30,000回負荷したものを, 接着試験用試片とした. この試片に対して, 万能試験機を用いてクロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さを測定した. また, 各処理後のEM表面についてSEM観察を行った.
 成績 : EMの表面自由エネルギーは, 唾液汚染によって低下するものの, 各表面処理によってその表面自由エネルギーは上昇した. このことから, 唾液汚染されたEM表面は, 各表面処理によって清掃効果を得たものと考えられた. セラミックスに対するレジンセメントの24時間後の接着強さは, 唾液汚染によって有意に低下するものの, 各表面処理を行うことによって向上した. 温熱負荷後のセラミックスに対するレジンセメントの接着強さは, いずれの条件においても24時間後と比較して低下するものの, その傾向は表面処理法によって異なるものであった.
 結論 : 本実験の結果から, 唾液汚染されたセラミックスへの表面処理がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について検討した結果, 唾液汚染されたセラミックスに対する各表面処理は, 汚染面を改質することで表面自由エネルギーおよび接着強さの向上に寄与することが明らかとなった.

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