日本歯科保存学雑誌
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原著
ProTaper Nextによる湾曲根管形成法修得における教育効果
下島 かおり渡邊 亮一郎佐藤 生野武藤 徳子石井 信之
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2016 年 59 巻 3 号 p. 287-292

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抄録

 目的 : Ni-Tiロータリー・ファイルシステムは, M-Wireによってファイルの柔軟性が向上し, 破折抵抗性の増強と高度湾曲根管に対する容易な根管形成を可能にした. 本研究で使用したProTaper Nextは, 湾曲根管に適したファイルとして開発された. 本研究は, 歯学部学生の模型実習に柔軟性に優れたNi-TiファイルのProTaper Nextによる根管形成を導入し, 根管形成実習における教育効果を評価することを目的とした.
 材料と方法 : 歯学部3年生96名に対しJ型エポキシレジン製透明湾曲根管模型にProTaper Nextで根管形成を行い, 形成後の根管壁変位量を評価した. ProTaper NextはX1, X2ファイルの2本で根管形成を終了した. 根管壁変位量の解析は, 実体顕微鏡Olympus SZX 16およびデジタルカメラDP71を使用し, 根管形成前後の透明根管模型をデジタル画像で重ね合わせ, 得られた画像データをPCに取り込み, 計測用ソフトを使用して計測を行った. 計測箇所は根尖から1, 2, 3, 5mmの位置を設定し, 学生と指導医の切削量を比較検討した.
 結果 : 学生96名による96根管の根管形成を行った結果, レッジ12根管 (12.5%) とファイル破折1根管 (1.0%) の偶発事故症例が認められた. 適切に形成された83根管 (86.5%) に対して根管壁変位量を解析した結果, 内湾側変位量は根尖側1~5mmのすべての測定部位で0.2mm以下を示し, 外湾側変位量は0.4mm以下であった. さらに, 学生と指導医の根管壁変位量を比較検討した結果, 内湾側と外湾側において同等の根管壁変位量を示し, 統計学的有意差が認められたのは外湾側の根尖側1, 5mmであった.
 結論 : ProTaper Nextによる根管形成を学生実習に導入した結果, 本来の根管形態を維持した根管形成が可能であり, ProTaper Nextの使用によってきわめて有効な教育効果を得ることが示された.

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