日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
マスティックおよびフルボ酸配合歯磨剤の歯周病症状に対する効果に関するランダム化比較対照試験
渡辺 久江尻 健一郎妻沼 有香
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 60 巻 3 号 p. 135-144

詳細
抄録

 目的 : 30名の歯周病患者に対し, マスティック樹脂から抽出されたマスティックエッセンシャルオイルを従来よりも低用量で配合した歯磨剤, およびバイオフィルムに対し効果が認められるフルボ酸を付加したマスティック配合歯磨剤の, 歯周病に伴う諸症状に対する効果を, ランダム化比較対照試験により評価した.

 材料と方法 : マスティックエッセンシャルオイルを配合した歯磨剤 (A群), マスティックエッセンシャルオイルにフルボ酸を付加した歯磨剤 (B群) およびこれを除いたもの (プラセボ群) の3群とした. 観察期間は初診から13週間とし, 初診時にブラッシング指導を行い, 1週後から歯磨剤を使用させた. 研究開始時と4週および12週に, 臨床パラメータによる臨床評価を行った. 加えて, 研究開始時と12週に細菌検査を実施した. 統計学的解析にはWilcoxonの符号付き順位和検定, χ2検定および分散分析検定を用いた.

 結果および考察 : プラセボ群・A群・B群のそれぞれで研究開始時と比較して, ほとんどすべての評価項目が有意差をもって, 症状が改善していた. 群間において, プラセボ群に対して「プラーク」の項目でA群が12週で有意差が認められた (p<0.05). 「排膿」の項目でA群とB群が4週で有意差 (p<0.05) があり, 「口臭」の項目でプラセボ群に対しA群とB群において4週でそれぞれ有意差 (p<0.01, p<0.001) が認められた.

 細菌検査について, 群間内の統計学的有意差は認められなかった. 本実験の結果はマスティック単独あるいはマスティックとフルボ酸配合歯磨剤の臨床的効果は確認できたが, その効果が細菌レベルまでは達していなかった.

 結論 : マスティック単独あるいはマスティックとフルボ酸配合歯磨剤が, 歯周病臨床症状改善に有効であることが示唆された.

著者関連情報
© 2017 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top