日本歯科保存学雑誌
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原著
亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメントによる歯根象牙質脱灰抑制能
長谷川 晴彦椎谷 亨見明 康雄日髙 恒輝國松 雄一石澤 将人二瓶 智太郎向井 義晴
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2018 年 61 巻 6 号 p. 361-367

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抄録

 目的 : 本研究では象牙質の脱灰抑制能について, 亜鉛・フッ化物・カルシウムを含有するガラスを用いて歯質保護を目的として新たに開発された亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメントを, Transverse Microradiography (TMR) を用いて比較検討するとともに, 電子線マイクロアナライザー (Electron Probe Micro Analyzer, 以下, EPMA) にて象牙質に取り込まれた元素の分析を行った.

 材料と方法 : 実験群は, 非処理群 (以下, コントロール), 従来型グラスアイオノマーセメント (Fuji Ⅶ) 群 (以下, F7) および亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメント群 (以下, C10) の3群とした. 各セメントを説明書どおりに練和後, ウシ歯根象牙質試料表面に乗せた2×3mmの穴あきテフロンシート (厚さ100μm) 内に塗布し, 圧接した. 5分経過後テフロンシートと余剰部分を除去し, 隣接する象牙質面を2×3mm残して耐酸性バーニッシュを施した. なお, コントロールはセメントで被覆する面を耐酸性バーニッシュで被覆し, 2×3mmの窓あけのみの状態にした. これら試料を容器の底部にワックスを用いて固定し, 上部より酸性溶液 (1.5mmol/l CaCl2, 0.9mmol/l KH2PO4, 50mmol/l acetic acid, 0.1ppm F, pH 5.0) を注入, 37℃で4日間脱灰を行った. なお, 溶液は24時間ごとに新鮮な脱灰液と交換した. 脱灰終了後, 試料を300μmに薄切してTMR撮影を行い, 分析用ソフトを用いて各群の平均ミネラルプロファイルを作成し, 平均ミネラル喪失量を測定した. また, 交換時に回収した脱灰液のフッ化物イオン濃度を測定した. ミネラル喪失量の統計分析はone-way ANOVAおよびTukey testを用い, 有意水準5%で行った (n=6). C10群の脱灰象牙質に取り込まれた元素 (Ca, P, F, Zn) に関しては, EPMAで切断面を分析した.

 結果 : 各群の平均ミネラルプロファイルでは, C10が表層および病巣体部ともにほかの群と比べて高いミネラルボリューム%を示した. ミネラル喪失量では, C10がほかの2群と比較して有意に少ない値を示した. EPMAの線分析からC10でZnが表層にきわめて薄く, Fも40μm程度取り込まれていることを確認した. CaおよびPは, TMRのミネラルプロファイルと類似した分散状態を示した. 脱灰溶液中のフッ化物イオン濃度は, C10がF7よりも高い値を示した.

 結論 : 亜鉛ガラス含有グラスアイオノマーセメントを塗布した隣接部の象牙質は, 脱灰が抑制されることが示された.

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