2019 年 62 巻 4 号 p. 199-207
目的 : 歯科用コーンビームCT (CBCT : Cone-beam computed tomography) は, 関心領域の高精細三次元 (3D) 画像を低線量で得ることができ, 任意の部位を三方向断面から立体的に観察することができるため, 歯内治療領域において, 診断精度と予知性の向上に革新的な進歩をもたらしている. 本研究では, 2015年および2016年に当科で実施されたCBCT検査に関する実態を調査し, 分析を行った.
材料と方法 : 2015年, 2016年の2年間に, 愛知学院大学歯学部附属病院歯内治療科を受診し, CBCT検査が必要であると判断され, かつ本研究の趣旨に同意が得られた患者を対象とした. CBCT検査を行った歯科医師に対し, 症例件数, 患者性別と年代, 撮像部位, 撮像目的, 得られた画像情報, 撮像後の処置方針に関するアンケート調査を実施し, 分析を行った.
結果 : CBCT検査数は, 2015年が78件, 2016年が159件であった. 撮像目的は, 「病変と解剖学的構造 (上顎洞, 下顎管, オトガイ孔など) との三次元的関係」 (2015年16.4%, 2016年17.8%), 「根尖病変の三次元的進展の確認」 (2015年17.6%, 2016年15.2%), 「根尖病変の有無の確認」 (2015年10.1%, 2016年12.0%) が多かった. また, 「皮質骨の欠損」 「上顎洞粘膜の肥厚」 「歯質の菲薄化」 などの撮像目的以外の病的変化の情報も得られた. 撮像後の処置方針として, 根管充塡まで終了していた症例 (2015年46.3%, 2016年50.3%) が多かった一方で, 撮像後に抜歯となった症例も存在した (2015年23.8%, 2016年11.7%).
結論 : 今回の実態調査から, CBCT検査は, 従来のエックス線検査では画像診断が困難な症例に関しては, 有用性が高いことが改めて確認できた. 今後もCBCT検査の実態調査を継続し, CBCT撮像に関する適切な症例選択のあり方を提言していく予定である. また, 読像に関して日頃から十分にトレーニングを行う重要性を卒前教育や卒後研修を通して啓発していく必要があると思われる.