2020 年 63 巻 2 号 p. 165-172
目的 : 歯科治療終了後のメインテナンス時にはPMTC用ペーストを併用した機械的歯面清掃が施されるが, 機械的清掃時の荷重や1歯面当たりの清掃時間がCAD/CAM用歯冠修復材料の表面性状に対してどのような影響を及ぼすかについては知られていない. 本研究では, 各種CAD/CAM用歯冠修復材料に機械的清掃を行った場合の荷重や時間が表面の光沢度や粗さに及ぼす影響を検討した.
材料と方法 : CAD/CAM用コンポジットレジンブロック2種類 (松風ブロックHC, エステライトブロック), およびCAD/CAM用セラミックブロック2種類 (IPSエンプレスCAD, セルトラDUO) の計4種類を用いた. これらのブロックを切断し, 厚さ3mmの板状試料を作製した. それぞれの試料表面を研磨後, PMTC用ブラシ (メルサージュブラシ) と1ステップ型PMTCペースト (プロフィーペーストPro) を用い, 2,500rpmの条件の下, Ⅰ群 : 荷重100gf, 清掃10秒間×4サイクル, Ⅱ群 : 荷重100gf, 清掃30秒間×4サイクル, Ⅲ群 : 荷重300gf, 清掃10秒間×4サイクル, Ⅳ群 : 荷重300gf, 清掃30秒間×4サイクルの4条件で機械的清掃を行った. 清掃前後の試片について, それぞれ試料表面の光沢度および表面粗さ (Ra, Rz) を計測した.
結果 : セラミック系ブロックでは, 機械的清掃による光沢度や表面粗さの変化は小さく, また変化した場合には光沢度が上昇する傾向を認めた. 一方, コンポジットレジン系のブロックに対して100gfで機械的清掃を行うと, 短時間 (10秒×4サイクル) では機械的清掃前後での光沢度に有意差を認めなかったが, 長時間 (30秒×4サイクル) では有意な光沢度の低下を認めた. また, 300gfで機械的清掃を行った場合においても光沢度は低下したが, その低下の度合は短時間清掃した場合と長時間清掃した場合とでほぼ同程度であった.
結論 : 1ステップ型PMTCペーストを用いて機械的清掃を行う場合, 特にコンポジットレジン系歯冠修復材料に対しては光沢が失われる可能性があり, 十分注意が必要であることが明らかとなった. 特に, 低荷重 (100gf) で長時間清掃すると光沢度の低下が著しいことから, 強めの荷重 (300gf) で短時間清掃することが望ましいものと思われた.