日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
Bioactive Glass配合根管充塡シーラーの生体内における起炎性と表面組成変化
加藤 昭人宮治 裕史吉野 友都金本 佑生実浜本 朝子西田 絵利香菅谷 勉田中 佐織
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 65 巻 2 号 p. 145-153

詳細
抄録

 目的:根管充塡シーラーは根管充塡直後から根尖部歯周組織に接触するため,優れた生体親和性を有することが望まれる.本研究の目的は,Bioactive Glass配合根管充塡シーラー(BG)の生体内における起炎性と表面組成変化を明らかにするため,ラット皮下に埋植して起炎性を評価するとともにシーラー表面の元素分析を行い,ケイ酸カルシウムを主成分とするシーラー(ES),酸化亜鉛ユージノール系シーラー(NC)および酸化亜鉛非ユージノール系シーラー(NCN)と比較検討した.

 材料と方法:ラット背部皮下にBG,ES,NC,NCNの硬化体を埋植し,術後10日および35日に試料と周囲組織を取り出した.CD68(マクロファージのマーカー)免疫染色を行い,術後10,35日の発現強度を測定した.また光学顕微鏡で硬化体周囲の皮下組織を観察し,炎症性細胞浸潤の程度をスコア化して比較を行った.さらに,術後35日のシーラー硬化体と皮下組織の境界部を,走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析にて評価した.

 結果:BG,ES,NC,NCNの10日および35日のCD68発現強度(pixel×1,000)は,2.8,1.9,6.4,6.6および0.3,0.5,3.5,1.8であり,BG,ESの発現強度は同程度で有意差を認めず,NC,NCNに比較して有意に低い値を示した(p<0.05).一方,BG,ES,NC,NCNの10日および35日の炎症性細胞浸潤のスコアは,1.7,1.5,2.6,2.7および1.4,1.5,2.2,2.3であり,BG,ESはNC,NCNに比較して有意に低い値であった(p<0.05).BGでは組織と接合した硬化体表層から内部へ向かって約200μmの範囲でCaとPを検出し,CaとPの強度は表層で最も強く,内部に向かって減弱していた.ESは主成分に関連するCa,P,Siが硬化体全体に分布していたが,表層(約40μmの範囲)にCaを強く検出した.一方,ES硬化体外部の皮下組織内に析出物と思われるCa,Pを含有する領域がみられた.NCおよびNCNでは主成分のZnに加え,硬化体表層直下に生体組織成分と思われるCやPを検出した.

 結論:ラット皮下組織内においてBGとESは良好な生体親和性を示した.また,BGとESの表層にリン酸カルシウムが析出した可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2022 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top