日本歯科保存学雑誌
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原著
PDLIM5は歯肉上皮細胞の増殖と遊走に促進的に作用する
臼井 通彦菅 毅典佐野 孝太朗中島 啓介
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2022 年 65 巻 2 号 p. 154-163

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抄録

 目的:歯周病は歯周病細菌によって,歯周組織に炎症が生じ,歯槽骨吸収が引き起こされる.その際に,歯肉上皮細胞はダウングロースし,歯周ポケットとなり,歯周病の病態を形成する.PDLIM5(PDZ And LIM Domain 5)はPDZ-LIMファミリーに属し,細胞増殖や遊走にかかわることが知られている.本研究の目的は,歯肉上皮細胞の増殖や遊走に対するPDLIM5の役割を明らかにすることである.

 材料と方法:歯肉上皮細胞としてCa9-22細胞を用いた.Ca9-22細胞におけるPDLIM5の発現は,リアルタイムRT-PCR法とウェスタンブロッティング法にて測定した.Small interference RNA(siRNA)を用いて,Ca9-22細胞におけるPDLIM5発現をノックダウンした.PDLIM5ノックダウンCa9-22細胞を用いて,細胞増殖アッセイ,スクラッチアッセイを行い,歯肉上皮細胞の細胞増殖能・細胞遊走能におけるPDLIM5の役割を検証した.また,Ca9-22細胞におけるリポポリサッカライド(LPS)によるPDLIM5発現・増殖能・遊走能への影響についても検討した.

 結果:LPS刺激はCa9-22細胞におけるPDLIM5 mRNA発現とタンパク質発現を上昇させた.PDLIM5をノックダウンしたCa9-22細胞では,ノンターゲティングコントロールを導入した細胞に比較して,その細胞増殖能と細胞遊走能が抑制された.一方で,LPSはCa9-22細胞におけるPDLIM5発現を上昇させたものの,細胞増殖や細胞遊走に影響を与えなかった.

 結論:PDLIM5は,歯肉上皮細胞の増殖・遊走を促進的に作用することが示唆された.

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