歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
咬合力に対するインプラントブリッジと天然歯ブリッジとの緩衝機構の相違について
花岡 繁樹
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1991 年 54 巻 4 号 p. g25-g26

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抄録

咬合時のインプラントブリッジにおける内部応力集中部位およびインプラント周辺の下顎骨骨体における応力分布などを明らかにする目的で, 一端が天然歯支台, 他端がインプラント支台のブリッジ<(4)(5)6[◯!I]>^^^-, 以下インプラントブリッジという) または両端が天然歯支台のブリッジ (<(7)6(5)(4)>^^^-, 以下天然歯ブリッジという) を装着した麻酔下の日本ザル (5頭, 体重 : 6.2〜9.8kg) の咬筋中央部を電気刺激により収縮させて, 咬合させたときおよび第一小臼歯部, 第二小臼歯部または第二大臼歯部で木片 (厚さ3mm) をかませたときに, 第二小臼歯部および第二大臼歯部の歯根中央部に相当する下顎骨骨体 (以下, それぞれ前方部および後方部という) の表面に生ずるひずみをストレインゲージ法を用いて測定した. また, 第一小臼歯部, 第二小臼歯部または第二大臼歯部の咬合面に1kgの垂直荷重を加えたときの, ブリッジおよび下顎骨表面の変位をホログラフィー干渉法を用いて観察した. なお, 天然歯列においても同様に実験した. インプラントブリッジにおいては, どの歯でかませても, 主ひずみ量は前方部よりも後方部のほうが大きいが, どちらの部でもその主ひずみの絶対量は天然歯ブリッジおよび天然歯列における同部の値に比べて著しく小さい. 以上の現象は, インプラントブリッジにおいてインプラント周辺の下顎骨骨体には応力が集中しているにもかかわらず, この部に骨の吸収が起こらないことの原因である. 天然歯ブリッジにおいては, 前方部と後方部とでその主ひずみの方向が異なることが多い. このことは下顎骨に複雑なねじれ現象が起こっていることを示している. しかし, インプラントブリッジにおいてはこのような現象はほとんど認められない. 第一小臼歯部あるいは第二大臼歯部に荷重を加えたときには, インプラントブリッジにおいてもまた天然歯ブリッジにおいてもブリッジ全体がほぼ同じ方向に変位する. しかし, 第二小臼歯部に荷重を加えると, どちらのブリッジにおいても両小臼歯は前下方に, これに対してポンティックおよび第二大臼歯は後下方に変位するが, その変位度は天然歯ブリッジにおいてはわずかであり, インプラントブリッジにおいては著しく大きい. インプラントブリッジにおいて著明な変位が起こるのは, 荷重により両小臼歯は歯槽窩に沈下するがインプラント体は前方へ傾斜するからである. すなわち, 第二小臼歯部に荷重を加えると, インプラントブリッジにおいてはその支台歯が下顎骨に堅固に固定されているから, 歯根部を支点とした片持ばり様の変位が起こる. そして, この変位が長期間にわたって持続すると第二小臼歯とポンティックとの連結部に金属疲労が現われ, インプラントブリッジが破折する原因となる. 以上, インプラントブリッジにおいてみられる力学的現象は, 咬合力に対するインプラントブリッジと天然歯ブリッジとの緩衝機構の相違によって起こることを明らかにした.

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© 1991 大阪歯科学会
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