1993 年 56 巻 5 号 p. 426-440
老化促進モデルマウスは、促進老化兆候を示す疾患動物である。その老化兆候のなかに変形性顎関節症が含まれることが解明された。そこでこのマウスの顎顔面頭蓋形態を把握することと、促進老化を示す SAMP 系と通常の老化を示す SAMR 系における加齢に伴う形態上の差異の有無を分析し、変形性顎関節症の疾患動物となる可能性を検討した。
実験は、実験群として SAMP1//Odu、対照群として SAMR1/Odu の雄性 SAM をそれぞれ 43 匹と、39 匹用いて行った。体重測定を定期的に行ったのち、側方頭部エックス線規格写真撮影を 5, 9, 14, 21, 29 および 36 週齢と、合計 6 回行い、Persson らの方法に従って分析した。その結果は、以下のとおりである。
体重の変化については、両系ともに 9 週齢までは急激な増加を示し、系統差は認められなかった。
経時的な形態的差異については、P 系が危険率 0.5% のレベルで有意に大きな値を示したのは、5 週齢では Ba-So、9 週齢では N-A、PoBa/PoE、14 週齢では Ba-Pr、Ba-So、PoBa/PoE、21 週齢では Ba-Pr、Ba-So、PoBa/PoE、29 週齢では Ba-Pr、36 週齢では Ba-Pr、Ba-So、PoBa/PoE、AN/PoE、AN/SoE であった。
以上の結果から、SAMP1//Odu 系と SAMR1/Odu 系の顎顔面頭蓋形態の差異は、成長発育の影響ではなく、5 週齢より存在する Ba の位置的差異が成長とともに変化した結果であると考えられる。このことより両系は 5 週齢より形態的な差異を有するものであり、SAMP1//Odu 系と SAMR1/Odu 系には SAMP3 系と SAMR 系に報告されるような比較変化はみられなかった。本実験では病理組織学的な検討を行っていないので極論することはできないが、SAMP3 系のように変形性顎関節症の疾患動物として使用することは困難であることが示唆された。