歯科医学
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大阪歯科大学附属病院のメチシリン耐性ブドウ球菌の分離状況と抗生物質感受性:第1報 鼻腔内保菌率について
辰巳 浩隆黒田 洋生植野 茂白数 力也羽竹 豊竹本 靖子福島 久典佐川 寛典毛利 学
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1993 年 56 巻 5 号 p. 441-447

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抄録

 大阪歯科大学附属病院でのメチシリン耐性ブドウ球菌の分布状況を把握するため、医療従事者、外来および入院患者の鼻腔内保菌率と分離されたメチシリン耐性ブドウ球菌の抗生物質感受性を検討した。メチシリン耐性ブドウ球菌は、医療従事者および外来患者の鼻腔からまったく分離されなかったが、入院患者 3 名の鼻腔と病室の 1 か所から分離された。入院患者から分離された 41 株のメチシリン耐性ブドウ球菌のうち、34 株が歯肉癌患者由来、4 株が口底癌患者由来、3 株が術後性上顎嚢胞患者由来であった。一方、病室からの 3 株は、すべてベッドの手すりから分離された。
 抗生物質感受性試験の結果では、chloramphenicol と vancomycin に対して、すべての菌株は感受性を示したが、その他の抗生物質は半数以下の菌株にしか感受性を示さなかった。抗生物質感受性試験に基づく分類では、9 タイプ(A~I)に分類され、またメチシリン耐性ブドウ球菌の由来と抗生物質感受性タイプの関連から、歯肉癌患者と口底癌患者とに共通したタイプ(AタイプとCタイプ)のメチシリン耐性ブドウ球菌が分離された。それゆえ、本大学附属病院では入院患者間での伝播の可能性が示唆される。

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© 1993 大阪歯科学会
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