歯科医学
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チタン系補綴物のYAGレーザ表面窒化の照射条件
額田 和門柿本 和俊小正 裕権田 悦通
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1995 年 58 巻 1 号 p. 1-16

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抄録

チタン系補綴物の色彩, 硬度および耐摩耗性の改善のために, 窒素ガス雰囲気下でパルスおよび連続発振レーザをチタン圧延板と鋳造体表面に照射して, 生じた窒化層に対するレーザ発振様式, ファイバー導光路, レーザパワー, 焦点はずし距離および試料移動速度の影響について検討した. 実験には, 純チタン圧延板と本講座で試作した熱膨張抑制埋没材(シリカ系)と市販のチタベストCB(ノンシリカ系)で作製した鋳造体を使用した. 実験装置には, パルス発振および連続発振レーザの2種類のYAGレーザ加工機を使用した. また, 導光路として, パルス発振レーザでは直径0.8mmのステップインデクス(SI)型およびグレーテッドインデクス(GI)型光ファイバーの2種類, 連続発振レーザではGI型光ファイバーを使用し, ともに窒素ガス雰囲気でレーザの照射を行った. その後, レーザ照射部表面の観察, 断面の金属組織観察, 表層の元素分析を行った.
 レーザ照射の溶融部は黄金色化した. チタンの窒化物は, 圧延板と鋳造体のどちらにも形成され, レーザによる表面窒化が可能であった. レーザ照射部は, 表層にデントライト状の窒化層が生成し, その下層にNを多く固溶したα-Ti層が生成した. 溶融部中央の窒化層は, 連続発振レーザ照射のほうがパルス発振レーザ照射よりも厚かった. レーザをSIファイバーで伝送するよりも, GIファイバーで伝送するほうが厚い窒化層を形成した. 窒化層は, 連続発振レーザ照射の場合, 試料の移動速度を遅くすると窒化層の幅が広くなり, 厚さも増加した. 鋳造体の場合, 表層に存在した元素は窒化層の下層の溶融部内に拡散した.
 以上のことから, チタン系補綴物にレーザを用いて窒化する場合, 諸条件によって窒化物, 窒化層の形態が変化することが明らかになった.

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© 1995 大阪歯科学会
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