歯科医学
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咬合力発現部の位置的な違いがラット顎顔面の成長発育に及ぼす影響について
有本 博英
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1995 年 58 巻 1 号 p. 17-30

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抄録

本研究の目的は, 咬合力発現部位の位置的な違いがラット顎顔面の成長発育に影響を及ぼすかどうか調べることである. 204匹の3週齢F344/Jclラットを無作為に3群に分けた. A群(n=72)は前方咬合群として上顎両側第一臼歯部で1mm咬合挙上し, P群(n=72)は第三臼歯部で咬合挙上, C群(n=60)は対照群とした. 咬合挙上は第三臼歯の萌出が完了する5週齢時で行い, その後粉末食で飼育した. 7, 9, 12および15週齢時に, 顎顔面形態および咬筋・側頭筋の乾燥重量を計測し, 拡張チューキー検定を用いて統計学的に各群間で比較した. 頭部エックス線規格写真の計測の結果, 蝶形骨はA群では前方に, P群では後方に回転しており(P<0.01), 脳頭蓋底に対する上部内臓頭蓋の成長方向がA群では前下方に, P群では前上方に回転していた(P<0.001). また, 下顎枝および下顎角はA群では下方に, P群では上方に成長していた(P<0.001). 脳頭蓋の成長量・方向に大きな違いはみられなかった. これらの変化の結果, A群はhypodivergent typeの, P群はhyperdivergent typeの顎顔面形態となった. しかしながら, 筋乾燥重量に有意差はなかった. 以上より, 成長期における咬合力発現部位の違いがラット顔面の回転成長の方向を変化させることが明らかとなり, それは顎関節部機能圧によるものと思われた. このことは力学的な意味での咬合管理の重要性を示唆するものである.

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© 1995 大阪歯科学会
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