歯科医学
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ラット頭蓋・上顎骨の実験的成長抑制が下顎頭におよぼす影響について
森川 充康
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1995 年 58 巻 1 号 p. 57-67

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抄録

幼若ラットの片側頭蓋・上顎骨に対する成長抑制が下顎頭軟骨におよぼす影響を検索するため, 組織学的ならびに形態計測学的手法を用いて本研究を行った.
 実験動物には, 5日齢の雄性Wistar系ラット80匹を用いた. エーテル吸入麻酔下にてラット頭部皮膚に正中切開を行い, 骨膜上で剥離したのち, ラット頭部形態に合わせて扇形に屈曲した0.41×0.41mmの矯正線を, 左側の眼窩下裂と後頭骨間に固定し, 皮膚縫合を行った. 4, 6, 10および15週齢において, ラットを麻酔下にて断頭し顎関節の組織切片を作製し, ヘマトキシリン・エオジン染色, およびトルイジンブルー染色による組織学的検索を行った. また, パーソナルコンピュータに同組織切片の画像を取り込み, 下顎頭軟骨層の三次元立体構築を行ったのち, 画像処理し下顎頭軟骨層厚径および軟骨細胞密度について計測を行った.
 その結果, 1)矯正線を固定した左側への頭蓋・顎顔面の非対称変形が認められた. 2)左側(偏位側)下顎頭中央部の軟骨層厚径は4および6週齢で対照群に比較して有意に大きかった. また, 同部のintermediate zoneおよび, hypertrophic zoneの厚径も同様に大きかった. 3)右側(非偏位側)では, 下顎頭後方部の軟骨層厚径は, 4および6週齢で対照群に比較して有意に大きかった. また, 同部のhypertrophic zoneの厚径も大きかった. 4)非偏位側下顎頭後方部と偏位側下顎頭中央部では, 10および15週齢においても軟骨基質のメタクロマジアが広領域で認められた.
 以上のことから, 幼若ラットの片側頭蓋・上顎骨に対する成長抑制の結果, 頭蓋・顎顔面部の成長が, 左側で矢状方向に抑制されることにより, 下顎頭の成長が上方に促進された. また, 頭蓋・顎顔面部が左側に偏位することにより顎口腔機能が変化し, 右側では, 下顎頭の成長が後方に促進されることが示唆された.

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© 1995 大阪歯科学会
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