歯科医学
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各種食品における咀嚼力の三次元的発現様相
三輪 佳子
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1995 年 58 巻 1 号 p. 44-56

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抄録

咀嚼力における食品差を解明する目的でヒトの天然歯に超小型の三分力計を組み込み, 三次元的な咀嚼力を直接観察した. 被検食品は6食品, すなわちビーフジャーキー, ピーナッツ, りんご, かまぼこ, カステラ, チーズとした. 下顎第一大臼歯髄室内に咀嚼力測定用の三分力計を組み込み, 上部に咬合面をとりつけ, 同部で被検食品を咀嚼させ同時に作業側咬筋筋電図を記録し分析した結果以下の結論を得た.
 1.各被検食品の嚥下に至るまでの咀嚼回数, 咀嚼力合力力積, 作業側咬筋筋電図積分値を観察した. ビーフジャーキーで咀嚼力合力が他の食品より際だって大きな値であったが咬筋筋電図積分値では咀嚼力ほども大きな差がなかった.
 2.咀嚼進行段階を5期に分けて咀嚼力の合力と咬筋筋電図の推移を検討した. その結果, 両者にはそれぞれの被検食品で特徴ある咀嚼の進行に伴うその物理性状の変化が反映されていた.
 3.咀嚼力の合力力積値と作業側咬筋筋電図積分値の相関係数の値から, 被検食品は特徴ある差を示し, 3群に分けることができた. また, 回帰直線の傾きにも食品差が観察された.
 4.咀嚼力合力の単位時間当たりの力積値はビーフジャーキー, ピーナッツの2つの硬性食品と, りんご, かまぼこ, カステラ, チーズの乾性食品の2極化した発現様相を示したが, 対応する咬筋筋電図の単位時間当たりの積分値は同じような傾向を示さなかった.
 5.食品咀嚼時の垂直力の力積に対する側方力の発現様相を比較すると, 絶対値では垂直力で大きな値を示すビーフジャーキーやピーナッツは側方力でも大きな値を示したが, 比率にすると側方力の発現に大きな食品差はみられなかった.
 6.任意の咬みしめを行わせた結果, 側方力は垂直力に追随するような増大をみせなかった. またこのときの力積を比率で示すと各被検者とも約1/5の小さな値であった.

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© 1995 大阪歯科学会
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