歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
多孔質アルミナセラミックの実験的インプラント後の骨と血管の新生に関する研究
江原 雄二
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1995 年 58 巻 1 号 p. g47-g48

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抄録

生体不活性材の多孔質アルミナセラミック人工歯根は単結晶アルミナをコアーとし, その外周に多孔質の多結晶アルミナが接着されている. 多孔質部外面に開く無数のopen poresは, 新生組織, とくに新生骨侵入によるインターロッキングを期待して, より強固な植土を求めて考案された. 著者らは本材を実験的に埴土し, 非機能状況下でインプラント体に接近してopen pores内に侵入する骨組織と微細血管構築の一連の変化を走査電顕で観察した. 材料および方法 成ニホンザルを用い, 両側下顎臼歯抜歯後60日, シリンダー型多孔質アルミナセラミック人工歯根を埋入あるいは突出植土した. 手術した動物を植土後5日, 1, 2, 3, 4, 9, 12週ごとで脱血安楽死させ, 両側総頸動脈からMMA微細血管注入を行い, 軟組織のみを処理し, インプラント体を中心とした骨, 微細血管鋳型標本を作製して走査電顕で, またインプラントを含めた試料を未脱灰のまま樹脂包埋し, 超精密研磨装置によって研磨標本として光顕で観察した. 実験結果 植土5日ではインプラント体外周の骨髄腔の既存血管から多孔質部界面で洞様血管形成が開始されていたが, 骨新生はなく, また両植土形式に差がなかった. 1週ではインプラント体外周では新生洞様血管が伸展・増生し, 多孔質部界面周囲で叢形成を, また既存骨小柱端に一次骨小柱(線維骨)の形成を認めた. この叢から伸展した新生洞様毛細血管はpore口に達していたが, 植土時に圧入された骨削物に侵入を阻害されていた. 2週ではpore内へ新生血管の侵入をみたが, 新生骨は大きい pore口のみに侵入し, pore内では毛細血管は糸球体状であった. 3週ではインプラント体外周の骨髄腔の幼若洞様血管はほとんど整理されて毛細血管となり, 新生骨小柱は肥厚, 密性化して髄腔を充塞していた. 多孔質部外面では骨小柱が形成され, 一部はたがいに密接し, 新生骨がpore口を充塞し始めていた. Pore内に成熟した毛細血管と針状の線維骨を認めた. 4週ではインプラント体界面周囲は密性化し癒合した新生骨小柱で囲まれていた. 埋入植立では新生骨が大きいpore口に深く侵入し, pore腔を充塞しつつあった. 突出埴土では, 多結晶部界面とpore口には骨新生を認めたが, 体部上半では大きいpore口のpore内には新生洞様毛細血管のみを認め, 新生骨は認められなかった. 9週では3週でみられた新生骨小柱は癒合して, 同界面の全周を取り囲む厚い一枚のインプラント槽骨(筒)を形成し, 底部には厚い新生骨板が密接していた. 多孔質部のpore同士が連結している腔内には, その内形に合致した密性化した骨が充塞し, 外方では槽骨と連続してインターロッキング状態を呈していた. Pore内の骨組織表面と同壁界面との間隙および同骨内には毛細血管が認められた. 12週の槽骨外周では一次骨小柱は整理され成熟骨小柱で髄腔が形成され, すでに髄腔の血管構築像を呈していた. 底部の槽骨は小板状の新生骨が重積し, 放射状配列の血管通路を有する曲面篩板となっていた. 結論 多孔質外面から複雑なpore内へ骨と微細血管が侵入するには日時を必要とし, pore迷路内での両要素には不統一像がみられた. 上部構造物の装着には9週〜12週の骨成熟期が適切と考えられるが, 多孔質部の骨組織によるインターロッキングの完成は, pore内への新生骨侵入開始からさらに6週間を要することが判明した. したがって, この付加期間を無視した上部構造の装着はマイクロフラクチャーの一因ともなり留意すべきであるといえる.

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© 1995 大阪歯科学会
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