歯科医学
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抜歯窩治癒過程においてカルボキシメチルキチンスポンジが骨再生に与える影響
大橋 芳夫岡崎 定司樋口 裕一井上 太郎小正 裕池 宏海戸田 伊紀竹村 明道諏訪 文彦
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2005 年 68 巻 1 号 p. 130-136

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抄録
インプラント臨床において, 歯槽骨量の早期回復と長期保持が必要になってきており, より歯槽骨再生効果の高い材料の開発が望まれている.キチンには創傷治癒促進効果, 止血効果, 炎症抑制効果があり, さらにCM基を付与することによって高い水溶性と生体内分解性を獲得させている.そこで今回, 抜歯窩にカルボキシメチル(以下, CM)キチンスポンジを適用し, 抜歯窩治癒過程の骨再生に与える影響を観察し, 抜歯のみの対照との比較から評価を行った.実験動物にはビーグル犬の成犬4頭を使用し, 実験部位は上顎小臼歯(P_1∿P_3)とした.実験材料は円柱形のCMキチンスポンジ(直径; 3.5mm, 長さ; 5mm)を使用した.実験方法は, 実験部位を無痛下で抜歯後, 左側にCMキチンスポンジを埋入し, 右側は抜歯のみを行い対照とした.実験期間(1, 2, 4, 8週)終了後, 安楽死を行い, アクリル樹脂注入を行い, 重合させた.上顎臼歯部を摘出後, X線写真を参考に抜歯窩の近遠心中央部を硬組織切断機にて頬舌方向に切断し, 骨・血管同時鋳型標本を作製し, 走査電子顕微鏡にて観察した.観察の結果, 実験期間4週においてCMキチンスポンジを埋入した抜歯窩では, 対照と比較して全体的に早期に旺盛な新生骨形成が認められた.実験期間8週においても対照と比較して窩口部および窩央部で新生骨形成が見られ, 窩口部を除く大部分で骨改造が開始しているのが認められた.また, 窩口での新生骨の陥凹を防止している像も認められた.この結果により, CMキチンスポンジは新生骨形成の進行を促進し, CMキチンスポンジの抜歯窩への埋入が, 抜歯窩歯槽骨の骨性治癒において有効であることが分かった.
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© 2005 大阪歯科学会
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