歯科医学
Online ISSN : 2189-647X
Print ISSN : 0030-6150
ISSN-L : 0030-6150
68 巻, 1 号
選択された号の論文の33件中1~33を表示しています
  • 西川 学, 田中 昌博, 川添 堯彬
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では健常有歯顎者の下顎臼歯について, 咬頭嵌合位における咬みしめ強度を増加させたときの三次元咬合力ベクトルの特徴を明らかにすることを目的とした.被検者は健常有歯顎者10名を選択した.そして下顎全歯のなかから, 第一小臼歯, 第二小臼歯, 第一大臼歯, 第二大臼歯を被検歯とした.被検者に中等度および最大咬みしめを行わせ, 咬頭嵌合位においてシリコーンバイトを採得した.シリコーンバイトの上下顎印象面は, 非接触三次元形状計測装置を用いて計測した.咬合力は咬合力測定用感圧フィルムを用いて測定した.上顎咬合平面を基準平面として, シリコーンバイトの上下顎歯間距離60μm以下の領域を抽出し, 咬合接触域とした.咬合力測定用感圧フィルム上の発色部位と形態から, 咬合力がどの咬合接触域に作用したものかを同定した.咬合接触域に含まれる点群から発生させた法線ベクトルを合成し, 傾斜方向を求め, 作用する咬合力を大きさとした三次元咬合力ベクトルを求めた.各歯の咬合接触点数, 咬合接触面積, 合力, 合力軸周りのモーメント, 合力軸の傾斜方向について, 歯種と咬みしめ強度を要因とした二元配置分散分析(被検者内計画)を行った.咬合接触点数, 咬合接触面積, 合力, 合力軸周りのモーメントは小臼歯に比べて大臼歯で大きい傾向を示した.合力軸の傾斜方向は, 矢状面観においても前頭面観においても, 咬合平面に対してほぼ垂直であった.咬みしめ強度の増加に伴い, 咬合接触点数, 咬合接触面積, 合力, 合力軸周りのモーメントは有意に増加した.しかし合力軸の傾斜方向には一定の傾向は認められなかった.以上のことから, 健常有歯顎者の下顎臼歯について, 咬頭嵌合位における咬みしめ強度を増加させたときの三次元咬合力ベクトルの特徴が明らかとなった.三次元咬合力ベクトルを評価することによって, より形態的かつ機能的に調和した咬合が付与できると考えられる.
  • 田中 秀直, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    歯科疾患の減少に伴い健康への価値観が変化し, CureからCareへ要望が高まっている.歯科医療が新たな健康増進へ指向するために, これまで未開発である顔面へのアプローチが重要であると考え, 非接触性3次元解析装置による顔面の測定の検討と, 口腔筋機能訓練(MFT)の顔面に及ぼす影響について評価した.まず, 装置の測定精度を直方体, 円柱体を用いて検討したところ, 測定誤差は0.10±0.38mmと少なく, 本装置による顔面の測定が可能であることがわかった.次にこの装置を用いて, 顔貌の違いによる顔面の形態変化を測定したところ, 下顎安静位における顔(真顔)に対する中心咬合位でかみ締めた状態での顔(咬合顔)では, 顔面の下部領域に大きな変化が認められることがわかった.また, 被験者にMFTを6か月間行わせたところ, 顔面の形態的な変化に伴う顔面変化量に有意な増加が認められた.さらに, 体重の増減は認められなかったが, 体脂肪率・体脂肪量は有意に減少した.以上の結果から, 非接触性3次元解析装置を顔面測定に用い, 継続して測定することで顔面に生じる様々な変化を定量的に評価できることがわかった.また, MFTは, 顔面に分布する筋肉に負荷を与え, 顔面の形態を変化させるだけでなく全身にも影響を与えることがわかった.
  • 民上 良将, 上田 雅俊, 今井 久夫
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)は歯槽骨やセメント質を含む歯周組織の統合的再生に関与することが報告されている.しかしながら, EMDがこれら歯周組織の再生を導く詳細な作用機序については不明な点も多々ある.また, EMDはin vitroにおいて酒石酸耐性酸性フォスファターゼ(TRAP)陽性破骨細胞様細胞を増加させるという報告もある.そこで本研究では, in vivoにおいて, EMDがTRAP陽性細胞の出現および動態にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするため, ラットに作製した歯周組織欠損にEMDを塗布した後の治癒過程を病理組織学的, 組織計測学的および酵素組織化学的に検討した.その結果, 実験群(EMDを塗布した群), 対照群(EMDを塗布しなかった群)ともにTRAP陽性細胞の出現に続いて新生骨の形成が認められた.とくに実験群では, 対照群に比較して歯槽骨部および露出象牙質面にTRAP陽性細胞が多く出現し, 歯槽骨再生率および上皮の深部増殖抑制率も大きかった.これらのことから, TRAP陽性細胞が歯周組織損傷部の歯槽骨面および露出象牙質面において組織再生構築に大きな関わりをもつことが示唆された.
  • 古川 智代, 山中 武志, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    Prevotella nigrescens (P. nigrescens)は, 口腔感染症から高頻度に分離される黒色色素産生性の偏性嫌気性グラム陰性桿菌である.我々はこれまでに歯周ポケットから分離したP. nigrescens strain 22 (strain 22)がexopolysaccharide (EPS)を産生し, 比較的強い膿瘍形成能をもつことを明らかにしてきた.しかし, EPSを産生する多くの臨床分離株は, 継代培養によってEPS産生性を失うか低下することが多い.EPSはバイオフィルムの主構成要素であり, 安定したEPS高産生株を得ることは, バイオフィルム形成に関する研究を遂行する上で重要である.そこで本実験では, strain 22を用い, 動物通過によるEPS高産生性の誘導・維持を試みるとともに, 産生増加に伴って発現が上昇する菌体タンパクの2次元電気泳動とN-末端アミノ酸シークエンス解析を行い, バイオフィルム形成に関与する調節因子についても検討した.マウスを用いた動物通過によりstrain 22のEPS産生は著しく増加したが, 通過後数回の継代培養によって, 短期間のうちに減少した.動物通過後, EPS産生の増加に伴って発現上昇が認められたタンパクスポットのアミノ酸シークエンス解析の結果, 3スポットは細菌シャペロン(DnaK, GroEL, GroES)のN末端アミノ酸配列と高い相同性を示した.これらの結果から, 動物通過ストレスによってストレス抵抗機構が働き, これがP. nigrescensのEPS産生性を増強し, バイオフィルム形成による環境への適合を誘導している可能性が示唆された.
  • 善入 雅之, 武田 昭二, 中村 正明
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    生体適合性に優れ, 長期に安定して機能する次世代のチタンインプラントを開発する目的で, 3通りの表面改質法, すなわちplasma based ion implantation法によるcpチタンへの窒素あるいは炭素イオン注入試料(パルス電圧 : 5kVおよび10kV, 90分間)とdiamond-like carbon (DLC)膜をコーティングした試料とを作製し, ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞(Saos-2細胞)とヒト歯根膜由来細胞の初期細胞接着および細胞増殖を, そしてSaos-2細胞についてアルカリホスファターゼ(ALP)活性および骨分化mRNA発現量定量測定試験ならびにStreptococcus mutans (S. mutans)による細菌の付着性をそれぞれ調べた.窒素あるいは炭素イオンを注入した試料表面では2段階のパルス電圧ともに明確な窒化物や炭化物は認められなかったが, DLC膜コーティング試料ではDLC膜形成があった.これら表面改質処理したチタン上では, 無処理cpチタンと同レベルの良好な初期細胞接着および細胞増殖が認められた.Saos-2細胞におけるALP活性および骨分化mRNA発現(ALP, コラーゲンタイブIおよびオステオカルシン)については, 無処理cpチタンに劣らぬ結果であった.これに対して, S. mutans付着はいずれの表面性質チタン群とも無処理cpチタンより有意に少なく, 3通りの表面改質チタン群間で差は認められなかった.すでに報告されている物性面の向上に加えて, 本実験においてチタン本来の優れた生体適合性が損なわれないばかりか, S. mutansに対する付着抑制が明らかとなった結果から, 今回行った表面改質処理は次世代のチタンインプラントの創製に道をひらくものといえる.
  • 松本 康宏
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究ではPrevotella intermedia (P. intermedia)のβ-lactam薬耐性機構を明らかにするため, その主体であるβ-lactamase遺伝子の解析を行った.口腔癌切除後の患者唾液から細菌を分離し, 42株のP. interemediaを同定した.これらのβ-lactamase産生性およびβ-lactam薬の最小発育阻止濃度をそれぞれ測定した後, 供試菌株としてβ-lactamase産生・β-lactam薬耐性(β-lac産生・耐性)12株とβ-lactamase非産生・β-lactam薬感受性12株を選択した.そして, グラム陰性桿菌由来β-lactamase遺伝子のブライマー12種を用いてPCRにより遺伝子の検索を行った.各PCR産物を大腸菌へ導入し, さらにβ-lac産生・耐性株3株においてCfxA2のブライマーで得られたPCR産物を大腸菌に導入した.β-lactam薬に対する耐性が最も高かった1株に対してCfxA3のプライマーを用い, 同様に導入した.また, その1株においてCfxA 2ブライマーで得られたPCR産物の塩基配列を決定し, 既報のβ-lactamase遺伝子と比較した.β-lac産生・耐性株にのみ所定の大きさで単一のバンドがみられたフライマーはCfxA 2とCfxA 3, そして所定の大きさを含む複数のバンドあるいは所定以外の大きさのPCR産物がみられたものはKoAmpCA, SfTEM, KpCAZおよびAbOXA21であった.各種ブライマーで得られたPCR産物を大腸菌に導入したが, β-lactam薬耐性は示さなかった.CfxA2のPCR産物の塩基配列は, CfxA 2とCfxA遺伝子ともに99%以上の相同性が認められ, β-lactamaseとしてのモチーフ領域も一致していたが, CfxA 2とは2か所, CfxAとは3か所で塩基の変異を生じていた.以上のことから、本研究に用いたβ-lac産生・耐性株にはCfxA 2とCfxA 3に類似した遺伝子が存在し, この遺伝子が菌種間で伝播しているものと考えられる.また, 遺伝子導入した大腸菌が耐性を示さなかった理由として, 本遺伝子の塩基配列が変異し不活化を生じたこと, あるいは菌種特異的な発現系が存在することが考えられる.
  • 岡下 慎太郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    近年, 確実な顎骨内固定としてチタンスクリュー等のTemporary Anchorage Device (TAD)を用いた歯科矯正治療法が臨床で応用されている.現在, TADとして様々な形態のスクリューが利用されているが, その形態が, 顎骨に及ぼす力学的影響についての報告はない.今回, スクリュー型TADの形態の相違が, 顎骨の応力分布にどのように影響するかを3次元有限要素法により検討し, その最適な形態について考察した.スクリュー体は, すべてチタン製とし, スタンダードタイプ, スレンダータイプ, ショートタイプおよびコニカルタイプの4タイプとした.また, 歯槽骨は皮質骨を1mm, それ以外の部位を海綿骨と規定した.解析モデルは, 3次元ソリッドモデラーで作製した.応力はスクリュー型アンカーに対して水平方向への荷重とし, 解析には汎用構造解析プログラムを用いて線形静解析を行った.その結果, すべてのタイプのTADで皮質骨相当部位の表層に応力が集中することがわかった.また, スレンダータイプが単位面積あたりの応力集中が極端に大きく, コニカルタイプが最も小さかった.スタンダードタイプとショートタイプ間では, 大きな相違は認められなかった.以上のことより, スクリュー型TADはその固定力の大部分を皮質骨表層部で負担しており, その応力分布には, スクリュー体の長さよりも, その上部の直径が影響する可能性があること, また, 可及的に皮質骨表層部に広く表面積をもつコニカルタイプのTADの応力分布効率が高いことが示唆された.
  • 大橋 芳夫
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 79-91
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    従来のハイドロキシアハタイト(以下, HAp)薄膜被覆インプラントはHApのもつ新生骨伝導能による治療期間の短縮などを期待して使用されたが, 膜の厚さが大きく, その強度が低いことから, 膜にひびや剥離が生じ, 期待通りの臨床成績をあげることは出来なかった.この問題を解決するためレーザアブレーション(以下, PLD)法を用いて1μm以下のHAp薄膜を作製し, 臨床応用に必要な機械的特性や結晶性, 組成均一性など調査を行い良好な結果を得てきた.このPLD法では, 非常に波長の小さいエキシマレーザを使用することによってターゲットのHApと組成のずれない超薄膜を作製できる.今回, 異なる厚さのHAp薄膜被覆インフラントについて表面形状変化を, さらにこれらのインプラント体の埋植動物実験から新生骨形成像を比較観察した.実験材料にはシリンダー型およびネジ型のインプラント体(CPチタン製)を使用し, 各々にPLD法により厚さ50nm(以下, 膜厚50nm)と300nm(以下, 膜厚300nm)のHAp薄膜を被覆させたインプラント体と対照として薄膜なしのインプラント体(以下, 対照)の3種類を用意した.実験動物はビーグル犬を使用した.実験部位は, 事前に抜歯を行い, 充分な治癒期間を設けた下顎小臼歯部歯槽骨とした.実験は, シリンダー型インプラントに異なる厚さのHAp薄膜を被覆させた表面の変化を走査電子顕微鏡(以下, SEM)にて観察し, また表面形状の変化を三次元非接触表面計測装置(以下, マッフ)を用いて計測した.次に実験動物3頭の実験部位に上記3種類のシリンダー型インプラント体各1本を無痛下で埋入した.また, 6頭について, 同様の方法にてネジ型インプラント体を埋入した.この際, 実験期間4週では右側, 8週では左側を用いた.実験期間終了後, シリンダー型インプラントを用いた3頭およびネジ型インプラントを用いた3頭は薬物過剰投与によって安楽死させた後, 総頸動脈よりアクリル樹脂注入を行い, 必要部位を摘出し, X線撮影した.このX線写真を基にしてインプラント体の近遠心中央部を歯槽骨ごと切断し, 血管・骨同時鋳型標本を作製した.そして, インプラント体を除去し, SEMにて観察した.また, 特にネジ型インプラントのインプラント空隙部に形成された新生骨量をSEM像から計測した.ネジ型を埋入した残りの3頭については, 組織標本を作製し, 光学顕微鏡にて観察した.インプラント体表面のマッフ観察から, 表面積および表面粗さが対照, 膜厚50nmおよび膜厚300nmの順に減少していた.動物実験後の歯槽骨のSEM観察ではシリンダー型, ネジ型共に膜厚50nmおよび膜厚300nmではともに対照と比較して多くの新生骨を形成している像が確認できたが, 両者の新生骨形成像に差異は認められず, 面積計測からも差は得られなかった.光学顕微鏡観察では, 対照はネジ山までの新生骨形成が認められなかったが, 膜厚50nmそして膜厚300nmではともにネジ山までの新生骨形成が観察された.以上の結果より, PLD法によって作製されたHAp超薄膜は対照のチタンよりも骨形成を促進することが認められ, 膜厚50nmという非常に薄いHAp膜でも膜厚300nmと同様の新生骨効果があることが確認でき, 薄膜は薄いほど機械的特性が向上することからも, 膜厚50nmのHAp薄膜被覆インプラントの臨床応用の有用性が示唆された.
  • 藤井 孝政, 柏木 宏介, 川添 堯彬
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では, 繊維強化コンポジット(FRC)を応用したメタルフリーブリッジの強度の向上を目指し, FRCの形態がブリッジの曲げ強さに及ぼす影響について検討した.実験材料として, FRC(BR-100, KURARAY MEDICAL)とハイブリッド型レジン(ESTENIA, KURARAY MEDICAL)を用いた.臼歯部3ユニットブリッジの支台歯を想定した金型を印象採得し, 超硬石膏にて作業用模型を製作した.作業用模型に透明シリコンの型枠を装着し, FRCとハイブリッド型レジンを填入してブリッジを製作し, 実験試料とした.FRC(厚さ1mm, 長さ28mm)の形態は, 幅3mm(F3)および幅6mm(F6)のそれぞれを, 平板状にしたもの(Straight)およびポンティック部で曲げたもの(Bent)の4種類に設定した.また, 参考としてハイブリッド型レジン単体の実験試料を用意した.実験試料はそれぞれ5個ずつ, 計25個製作した.実験試料を室温, 空気中で24時間保存し, 接着性レジンセメントを用いて金型に接着した.万能試験機を用いてポンティック中央部に荷重を加え, 破折時の最大荷重値を曲げ強さとして求めた.統計学的解析はFRCの幅および形態を要因とする二元配置分散分析を用いた.統計学的有意水準を1%に設定した.分散分析の結果, FRCの幅および形態に有意差が認められた.曲げ強さはF6 Bentが最も大きく, 以下F6 Straight, F3 Bent, F3 Straight, およびハイブリッド型レジン単体の順となり, FRCの幅を3mmから6mmにすること, およびポンティック部でFRCを曲げることによって, それぞれ約400Nの強度の向上が認められた.以上の結果から, FRCをブリッジへ応用する際には, FRCの幅を大きくすること, およびFRCをポンティック部で曲げることが望ましいことが明らかとなった.
  • 伊津 元博, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 99-110
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    歯肉炎の診査はこれまで主観的診査を中心に行われてきているため, 診査結果の信頼性・再現性・妥当性は高くないのが現状である.歯肉の客観的な診査方法を確立することは, 歯肉炎や歯周炎の予防に必要不可欠であり, 歯肉炎のリスク診断の予測精度を向上させることにつながる.本研究は, 2種類の歯肉デジタル画像を各々の解析方法で得られた定量値により, 初期歯肉炎の経日的変化を客観的に観察する目的で行った.23&acd;25歳の成人15名を被検者とし, 7日間歯口清掃の停止を指示した.歯口清掃停止1日, 2日, 3日, 5日, 7日後に口腔内診査を行い, 上顎右側中切歯歯肉の被検部位を改良CCDカメラ(41万画素)(コアフロント社製, 東京)とQuantitative Light-Induced Fluorescence (QLF)法の撮影条件下にてINSPEK-TOR PRO^<TM> (Inspektor Research Systems B. V.社製, オランダ)とを用いて撮影した.得られた口腔内写真のデジタル画像は, 画像解析ソフトIMAQ Vision Builder 6^[○!R](National Instruments社製, 米国)を用い, 歯肉の表面状態を定量化するとともに, デジタル画像上の明度比により歯肉の凹凸を視覚化した.また, QLFデジタル画像はQLF法画像解析ソフトInspektor Pro 1. 2. 0. 4^<TM>を用い, 歯肉の色調の強さを定量化し, 歯肉の変化について検討した.改良CCDカメラのデジタル画像により, 歯肉表面の凹凸を視覚化した結果, 歯肉の表面形態の経日的変化を定量化することができ, 歯肉炎症の広がりを3次元画像として視覚的に表現することができた.また, QLF法による画像解析により, 歯肉の赤色色調部分の経日的変化を定量化することができ, この値から初期歯肉炎の経日的変化は歯肉中央部から辺縁歯肉, さらに付着歯肉側へと広がることが明らかになった.
  • 松島 恭彦, 楠本 哲次, 川添 堯彬
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 111-119
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では, 咀嚼運動における大脳皮質の賦活部位に言語優位半球が及ぼす影響を検討し, 咀嚼運動中枢を検索することを目的とした.被検者として脳障害の既往が無い健常有歯顎者12名(男性7名, 女性5名, 22&acd;34歳, 平均28.6歳)を選択した.習慣性咀嚼側の判定には被検者の自覚と, 低粘稠性発色ガムを用いて咀嚼能力を測定した.咀嚼能力は右側もしくは左側にて発色ガムを50回咀嚼させた後, 分光測色計にてガムの両面を各5回計測し, 計10回のa^*の値の平均値を代表値とした.そして, a^*の値が高い側を習慣性咀嚼側とした.本研究では被検者の自覚と咀嚼能力の高い側が一致した被検者を選択した.fMRIの撮像には1.5 T臨床用MR装置を用いた.撮像方法はマルチスライスEPI法であった.言語優位半球を同定するため, しりとりタスクを行った.しりとりタスクは安静時間40秒間としりとり時間40秒間を3回繰り返し行わせた.ただし, 初回安静時のみ50秒間とし, 計4分10秒間のタスクとした.咀嚼運動は右咬みタスク, 左咬みタスクとした.各タスクは咬頭嵌合位にて上下顎の歯を軽く接触させ, タスク側の咬筋を等尺性に収縮させるように指示した.タスクは安静時間30秒間と咀嚼時間30秒間を4回繰り返した.ただし, 初回のみ安静時間を40秒間とし, 1タスク計4分10秒間とした.fMRI画像の解析にはSPM99を用い, 統計処理にはpaired t-検定を選択した.p<0.001とし, 連続したボクセルが20以上連続している部分を結果として表示した.被検者の習慣性咀嚼側は, 右側8名左側4名となった.また, 言語優位半球は10名が左側, 1名が右側, 1名が明瞭な言語優位半球を認めなかった.言語優位半球が左側の被検者において右咬みタスクおよび左咬みタスクでは, 賦活は左側もしくは両側に認めた.言語優位半球が右側の被検者において賦活は両側に認めた.以上のことから, 咀嚼運動による大脳皮質賦活部位は言語優位半球側を必ず含み, 言語優位半球と関連があることが明らかとなった.
  • 塩路 伊佐子, 上田 佳世, 林 宏行, 松田 孝之, 上野 眞徳, 前田 潤一郎, 池尾 隆
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 120-129
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    外傷による脱落歯を出来るだけはやく, なおかつ短期間最適な溶液に保存することにより, 残存する歯根膜が新鮮な状態を保持することができる.これが再植を成功に導く重要な因子である.今回の実験では, 手近にあり誰でも容易に応用できるという観点から, 牛乳の保存液としての有用性について, 培養液(DMEM)および生食と比較しながら, 歯根膜細胞(PDL細胞)の増殖能およびアルカリホスファターゼ(ALP)活性の変動を指標として検討した.その結果, 30分保存で3種保存液とも細胞数およびALP活性は低下した.しかし, 生食を除き, 保存時間の延長に伴い細胞数の増加および活性の回復がみられた.続いて, 保存液中で30分または120分間保存後, 培養液にもどし10日後までの経日に伴うALP活性の変動をみた.両時間とも牛乳およびDMEMでは経日に伴い上昇したが, 生食では活性増加は認められなかった.細胞の形態観察でも30分処理では3種保存液とも細胞の損傷がみられたが, 牛乳および培養液では処理後培養10日目で細胞の損傷は完全に回復していた.以上の結果より, PDL細胞保存液としての牛乳は, 120分間までの保存において細胞外液として, また栄養素の補給源としても十分であり, 牛乳を短時間保存に応用することは, 臨床的にきわめて有用であるものと考える.
  • 大橋 芳夫, 岡崎 定司, 樋口 裕一, 井上 太郎, 小正 裕, 池 宏海, 戸田 伊紀, 竹村 明道, 諏訪 文彦
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 130-136
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    インプラント臨床において, 歯槽骨量の早期回復と長期保持が必要になってきており, より歯槽骨再生効果の高い材料の開発が望まれている.キチンには創傷治癒促進効果, 止血効果, 炎症抑制効果があり, さらにCM基を付与することによって高い水溶性と生体内分解性を獲得させている.そこで今回, 抜歯窩にカルボキシメチル(以下, CM)キチンスポンジを適用し, 抜歯窩治癒過程の骨再生に与える影響を観察し, 抜歯のみの対照との比較から評価を行った.実験動物にはビーグル犬の成犬4頭を使用し, 実験部位は上顎小臼歯(P_1&acd;P_3)とした.実験材料は円柱形のCMキチンスポンジ(直径; 3.5mm, 長さ; 5mm)を使用した.実験方法は, 実験部位を無痛下で抜歯後, 左側にCMキチンスポンジを埋入し, 右側は抜歯のみを行い対照とした.実験期間(1, 2, 4, 8週)終了後, 安楽死を行い, アクリル樹脂注入を行い, 重合させた.上顎臼歯部を摘出後, X線写真を参考に抜歯窩の近遠心中央部を硬組織切断機にて頬舌方向に切断し, 骨・血管同時鋳型標本を作製し, 走査電子顕微鏡にて観察した.観察の結果, 実験期間4週においてCMキチンスポンジを埋入した抜歯窩では, 対照と比較して全体的に早期に旺盛な新生骨形成が認められた.実験期間8週においても対照と比較して窩口部および窩央部で新生骨形成が見られ, 窩口部を除く大部分で骨改造が開始しているのが認められた.また, 窩口での新生骨の陥凹を防止している像も認められた.この結果により, CMキチンスポンジは新生骨形成の進行を促進し, CMキチンスポンジの抜歯窩への埋入が, 抜歯窩歯槽骨の骨性治癒において有効であることが分かった.
  • 今井 久夫, 上田 雅俊, 高津 兆雄, 河野 智生, 小池 敏克, 民上 良将, 田口 洋一郎, 高橋 貫之, 金村 直子, 寺田 昌一郎 ...
    原稿種別: 本文
    2005 年 68 巻 1 号 p. 137-145
    発行日: 2005/03/25
    公開日: 2017/05/18
    ジャーナル フリー
    近年, 血小板中に創傷治癒に関連する様々な成長因子が含まれていることから血小板を濃縮した血漿(多血小板血漿, Platelet-Rich Plasma : PRP)が再生医療の分野において注目をあびている.しかしながら, このPRPが歯周組織再生に対して及ぼす影響については未解明な点が多い.そこで本研究ではPRPを応用した後の歯周組織について病理組織学的および組織計測学的に検討した.実験方法としては, サルの上顎左右側小臼歯部に頬側裂開型骨欠損を作製し, 左側には術前に作製した自己血由来PRPを浸潤させたアテロコラーゲンスポンジを挿入し, 実験群とした.右側はアテロコラーゲンスポンジのみを挿入し, 対照群とした.実験期間は6. 12週とし, それぞれの期間経過後, 試料を作製し病理学的観察を行った.その結果, 実験群は対照群と比較して上皮のダウングロースが抑制され, 歯槽骨, セメント質の新生がともに促進された.しかしながら, 新生されたセメント質は通常のフラップ手術後の根面に再生される細胞性セメント質であった.これらのことから, PRPは歯周組織再生療法として有効であるが, 臨床応用に際しては不明な点が残されており, 今後, 検討の必要性が示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
feedback
Top