歯科医学
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臨床から分離したバイオフィルム形成性Streptococcus intermediusの分子生物学的解析
西村 耕一山根 一芳福島 久典
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2008 年 71 巻 2 号 p. 131-138

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抄録

口腔には単一種でバイオフィルムを形成できる細菌が存在し,疾患の慢性化,難治化に関与している.本研究では,口腔細菌のバイオフィルム形成に関与する遺伝子群について知り,口腔細菌によるバイオフィルム形成の遺伝学的背景を明らかにすることを目的に,口腔膿瘍から分離されたStreptococcus intermediusのバイオフィルム形成に関係する遺伝子を検索した.臨床分離のバイオフィルム形成性S. intermedius(H39株)を各濃度のグルコースを含む培地中で24時間培養後,バイオフィルム形成量を測定すると,グルコースの濃度に依存して形成量が増加しており,グルコース代謝がH39株のバイオフィルム形成に深く関与していることが示された.グルコース代謝において,glucose 6-phosphateをα-glucose 1-phosphateに転移する酵素α-phosphoglucomutase(PGM)は,バイオフィルム形成に重要な働きをしていることが報告されている.そこで,データベース上のPGMをコードする遺伝子の配列からプライマーを設計し,H39株のゲノムからpolymerase chain reaction法により遺伝子増幅を試みた.その結果,増幅されたフラグメントは,Streptococcus gordoniiのPGMをコードするpgm遺伝子と高い相同性を示した.このフラグメントの中央部にエリスロマイシン耐性カセットを挿入して作製した遺伝子をH39株に形質転換し,得られた変異株の細胞表層を走査型電子顕微鏡で観察すると,網目状構造物は完全には失われていなかった.これらの結果から,臨床分離のS. intermedius H39株はグルコース依存性にバイオフィルムを形成し,それに関わる糖転移酵素をコードする遺伝子をもっていることが分かった.その形成過程には複数の経路が存在する可能性があり.今後さらに詳しい解析が必要である.

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© 2008 大阪歯科学会
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