歯科医学
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Quantitative real-time RT-PCR法によるPrevotella intermedia heat shock protein関連遺伝子の発現解析
加藤 秀治山中 武志福島 久典
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2008 年 71 巻 2 号 p. 147-155

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抄録

歯周病原細菌の1つであるPrevotella intermedia (P. intermedia)のexopolysaccharide (EPS)産生性とバイオフィルム様構造の形成調節に,熱ショックタンパクをコードするgroES, groEL, dnaJ, dnaK, clpBが関与している可能性を示唆するデータをマイクロアレイ分析により得ているが,今回,これらの遺伝子の転写が,実際にバイオフィルム形成菌株で常時高いレベルにあるのか,また,培養期間を通じてどの程度変動しているのかについてquantitative real-time reverse transcription-PCR (real-time RT-PCR)によって検討した.供試菌株にはP. intermedia strains 17, 17-2, ATCC 25611を用いた.それぞれの6, 12, 18, 24, 30時間培養菌液よりtotal RNAを回収しreal-time RT-PCRに供試した.マイクロアレイ分析にてstrain 17で発現上昇を認めた,dnaK, grpE, dnaJ, groEL, groES, clpBの遺伝子配列よりプライマーをデザインし,リファレンスゾーンには16 S rRNA遺伝子を用い,相対的な遺伝子発現強度を求めた.培養12時間における菌株間での遺伝子発現量を相対的に比較したところ,バイオフィルム形成能を失ったstrain 17-2に対してstrain 17, ATCC 25611の転写量がすべての遺伝子で高く,strain 17とATCC 25611間では,strain 17のdnaJ, groEL, groES, clpBの転写量が約3倍程度高い結果となった.strain 17とstrain 17-2における各遺伝子転写量の経時変化を調べたところ,strain 17では培養6〜18時間ですべての遺伝子の転写量が高く,その後低下する傾向を認めた.一方strain 17-2では培養時間に関係なく低いレベルで推移していることが明らかとなった.今回の研究結果より,P. intermediaの熱ショックタンパク遺伝子の転写量は,バイオフィルム様構造を形成するstrain 17で高いことがreal-time RT-PCRによっても確認された.Strain 17の熱ショックタンパク遺伝子転写レベルは培養初期に上昇しその後低下すること,培養時間ごとの変化はstrain 17-2に比べて大きいものであったことから,これらの遺伝子群がP. intermediaが増殖し,新たな細胞集団を形成する際に高い転写レベルにあることが,バイオフィルム様構造の形成・維持に繋がっている可能性が示唆された.

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© 2008 大阪歯科学会
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