歯科医学
Online ISSN : 2189-647X
Print ISSN : 0030-6150
ISSN-L : 0030-6150
乳歯歯髄にみられるリンパ管についての研究
富永 康彦隈部 俊二岩井 康智
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 71 巻 3_4 号 p. 195-200

詳細
抄録

歯髄内にリンパ管が存在するか否かについては論争がある.組織液の排導系としてリンパ管の分布を認める研究と,脈管外通液路のみにより行われるとする研究が,電子顕微鏡による微細構造の観察や酵素組織化学的あるいは免疫組織化学的な観察を通して行われてきたが結論は未だ出ていない.また,乳歯歯髄のリンパ管についても研究があまり進んでいない.今回,乳歯におけるリンパ管の存在を確認するため,乳歯歯髄において透過型電子顕微鏡による観察と免疫組織化学的な検索を行った.治療目的で抜歯された乳歯から歯髄を取出し,通法に従い固定しepon812に包埋し超薄切片を作製した.酢酸ウラニールおよび酢酸鉛の二重染色後,透過型電子顕微鏡で観察した.また乳歯を無固定で凍結包埋し,クリオスタットを用いて10μm厚の凍結切片を作製した.リンパ管内皮に存在するO型シアロ糖タンパクと特異的に反応する抗D2-40抗体を用いて,免疫組織化学染色を行った.透過型電子顕微鏡観察により,毛細リンパ管の存在を認めた.また,免疫組織化学的観察で歯髄中央部付近および辺縁部に明瞭な陽性像を認めた.永久歯歯髄に対する酵素組織化学的な方法としては5'-ヌクレオチダーゼ活性を指標とする研究,免疫組織化学的な方法として胸管に対する抗体(mAb-D)や脈管内皮細胞成長因子受容体に対する抗体(VEGFR-3)を用いた研究がリンパ管検索のために行われ,リンパ管の存在に肯定的な見解が出されている.今回我々の行った研究において透過型電子顕微鏡観察により毛細リンパ管が確認されたことおよび乳歯歯髄に抗リンパ管抗体陽性像が認められたことにより,乳歯歯髄においてもリンパ管が存在することが示唆された.

著者関連情報
© 2008 大阪歯科学会
次の記事
feedback
Top