歯科医学
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ボクシングにおける攻撃動作時と防御動作時の咬合接触について
岡崎 全宏田中 昌博川添 堯彬
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2008 年 71 巻 3_4 号 p. 210-219

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抄録

スポーツ時の咬合接触は,咬みしめている,咬みしめていない,個人差がある,などの報告があるが,定説はなく,被検運動によっても変わってくる.競技時により近い咬合接触動態を測定するため,当講座の開発した,ボクシング用リアルタイム咬合接触動態計測システムを用いて,攻撃動作時および防御動作時におけるマウスガード上での咬合接触動態の測定を行った.被検者には,本学附属病院に来院し,習熟されたボクシング選手10名を選択した.マウスガードはEVAシートを用いて,加圧形成器にて製作した.測定装置は,圧力分布測定システムとして口腔内の咬合接触動態はニッタ社製I-Scanを使用し,本講座が開発したボクシング用リアルタイム咬合接触動態計測システムを用いた.被検運動として,攻撃動作には,ストレートとフックを選択した.防御動作には,パーリングとアームブロッキングを選択した.なお,被検者に疲労が蓄積しないように,各試行間には適度なインターバルを置いた.測定方法ならびに解析方法として,I-SCANの咬合接触圧用特注センサシートをマウスガード上に固定し,最大咬みしめを行わせた咬合接触圧を100%とした.そして,被検運動をそれぞれ30秒間行わせ,トリガ信号出力時の咬合接触圧を記録した.このうち,安定した10ストロークのデータを選択した後,最大咬みしめに対する相対値を%で表示し,平均値と標準偏差を算出した.結果,全被検者において攻撃時では,どの被検運動においても最大咬合接触圧の10%以下の値であった.また,全被検者において防御時では,どの被検運動においても最大咬合接触圧の5%以下の値であった.この結果から,ボクシング選手の,攻撃動作時と防御動作時ともに,強く咬みしめていないことがわかった.

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© 2008 大阪歯科学会
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