2010 年 83 巻 6 号 p. 256-262
トリフェニルアミン系ホール輸送材料としてフェニルエチル基,ジメチルアミノ基,アセチル基,アゾメチン結合などをもつトリフェニルアミン誘導体を合成し,それらを用いた色素増感太陽電池やヨウ素錯体結晶を作製し,その特性を検討した。まず,電解質部分に合成したトリフェニルアミン誘導体を用いて固体色素増感太陽電池を作製し,その光電変換特性よりこれらのトリフェニルアミン誘導体がホール輸送材料として機能することを確認した。さらにこのホール輸送層にヨウ素をドープすることで大きく光電変換特性が向上するトリフェニルアミン誘導体が見いだされ,ヨウ素ドープが性能向上の有効な手段であることが示唆された。このヨウ素ドープの作用は酸化によるジイモニウム塩の形成に起因すると推定された。またフェニル基をもつトリフェニルアミン誘導体はヨウ素と安定で電気伝導率の高い錯体結晶を生成することが見いだされ,有機半導体材料として有望であることが示唆された。