色材協会誌
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解説
ポリプロピレン繊維の染料開発および染色技術
堀 照夫 宮崎 慶輔
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2021 年 94 巻 2 号 p. 35-39

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抄録

1954年に開発されたポリプロピレン繊維は,十分な強度を有し,耐薬品性に優れ,比重が0.91と軽く,安価であったが,染色できないために衣料用用途などへの展開には限界があった。われわれは,ポリプロピレンを実用化レベルで染色できる染料の開発に取り組み,似たものは溶けあうという「原理」に基づいて,ポリプロピレンの構造に類似な官能基をアントラキノン系染料の置換基として導入することで新規染料を開発した。開発した染料を用い,超臨界二酸化炭素を媒体とする「超臨界染色法」でポリプロピレンが容易に染色ができ,高い堅ろう度を有することを見いだした。黄,赤,青の3原色を揃え,これらの染料を混合して用いることによりその他の色にも染色できることも示した。SGDsを目指す繊維産業にあって,水を使わず,廃液も出さない超臨界染色は,すでにポリエステルニットについてアジア各国で実用化が行われているが,物性や価格でアドバンテージが高いポリプロピレン染色は今後の染色業界の切り札として世界展開できると期待できる。

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© 2021 一般社団法人 色材協会
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