再生可能な素材としてきわめて有望な植物由来の生物資源であるセルロースから長さと幅がよく制御されたナノメートルオーダーで棒状の形態を有するセルロースナノ粒子が得られる。このセルロースナノ粒子をショ糖の60 wt%水溶液に分散させた懸濁液が示す粘弾性挙動を詳細に検討すると,DoiとEdwardsによって提案された単分散な棒状粒子の懸濁液についての理論的な予測によってよく説明される挙動が見いだされた。この理論は,粒子の長さに分布をもつ多分散性の懸濁液に適用できるように修正することが可能であった。セルロースナノ粒子の懸濁液試料は,ひずみを与えることで生じる棒状粒子が被る配向エントロピーの減少が,弾性の起源であることを明瞭に示すモデル系として振る舞うのである。