色材協会誌
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原子吸光法による防汚塗料中の銅, 亜鉛およびスズの定量における湿式分解法の検討
高橋 一暢重松 満大八木 義彦
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1986 年 59 巻 7 号 p. 410-415

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抄録

船底防汚塗料中の金属成分 (銅, 亜鉛およびスズ) を定量する際, 防汚塗料の湿式分解に用いる種々の酸の組み合わせと金属成分の回収率とについて検討した。銅, 亜鉛はいずれの湿式分解法においても, ほぼ94~103%の回収率を示しているのに対して, スズは硝酸, 硝酸→過酸化水素水による湿式分解において回収率が10%前後となり著しく低い回収率を示した。この事は, 硝酸によってスズが不溶性のメタスズ酸を生成するためであると考えられる。また酸の組み合わせとして塩酸-硝酸 (3 : 1) の方が硝酸-硫酸 (3 : 1) の場合よりもスズの回収率が良い結果を示した。すなわち, 防汚塗料中の銅, 亜鉛のみの定量分析のために行う湿式分解においては, 使用する酸の組み合わせは大きな問題とならないが, スズの場合は酸の組み合わせが重要な問題となる事が明らかとなり, 防汚塗料中の金属成分の総括的な分析法としては, 塩酸-硝酸 (3 : 1) を湿式分解に用いる事が, 硝酸-硫酸 (3 : 1) よりも優れていることが明らかとなった。

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