多発性硬化症は代表的な脱髄性疾患で,再発寛解を繰り返す.再発を繰り返すと神経障害が蓄積され,数年から十数年で二次進行型に移行する.この慢性進行期は,末梢の免疫反応にかかわらず中枢神経系で徐々に神経障害が悪化していく.そのメカニズムに深く関わるのが,中枢のグリア細胞という非神経細胞の活性化(=グリア炎症)である.グリア炎症は様々な要因に左右されるが,その重要な一つがギャップ結合蛋白コネキシンの機能異常である.多発性硬化症の急性期にはアストログリアのコネキシンが低下し,慢性期では逆に発現上昇する一方,オリゴデンドログリアのコネキシンは低下し続ける.この現象が神経保護的に働くのか障害性に働くのか,現時点では不明である.このメカニズム解明が,現在まで治療法のない慢性進行期の多発性硬化症治療薬開発につながる.