網膜から入力した視覚情報はボトムアップ方式に情報が送られ段階的・階層的情報処理を受けると同時に,高次視覚領域からの注意や記憶といったトップダウン式の修飾も受ける.このような視覚認知のNetworkの解明には解剖学的および機能的な神経構造基盤の知見の双方を積み上げていく必要がある.
本稿では,①解剖学的神経構造基盤の例として,マカクザルを実験動物として,狂犬病ウイルスをトレーサーとして用い,視覚情報処理のボトムアップ式およびトップダウン式の多シナプス性ニューロンNetworkについて ②fMRIを用いた機能的視覚認知のNetworkについて ③視覚認知のNetworkから視機能と疾患との関連を考える例として,斜視患者における三次元形態認知に関して概説する.
我々が無意識で行っている“視覚認知”も,非常に精密かつ繊細なNetworkから構成されており,このNetworkのどこかに破綻をきたしても視覚に影響を与えうる.視覚認知そのものが奥深いものであり,今後さらなる発展を期待したい.