2021 年 38 巻 1 号 p. 41-46
症例は15歳の男児.剣道の練習中に竹刀の破片が防具を通過し,右上眼瞼部から刺入したため,当センターに救急搬送された.初診時,右視力は手動弁で,右直接対光反応は陰性であった.頭部CTでは右眼窩内視神経の上鼻側近傍を通過し,海綿静脈洞まで達する線状異物を認めた.受傷当日に異物摘出術を行い,ステロイドパルス療法を開始し,その後ステロイド内服にて漸減した.右矯正視力は1.2まで改善したが,右視野検査で下方の傍中心暗点が残存した.受傷後早期のスペクトラルドメイン光干渉断層計では所見を認めなかったが,2週目より神経節細胞複合体厚及び乳頭周囲網膜神経線維層厚で下方傍中心暗点に一致した菲薄化が観察された.本症例では迅速で適切な処置が比較的良好な視機能に繋がったと思われた.