神経眼科
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症例報告
眼筋型重症筋無力症の類縁疾患と考えられた2症例
五十嵐 鎮秀増田 明子木村 亜紀子望月 嘉人五味 文
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2023 年 40 巻 1 号 p. 38-43

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抄録

 片眼の眼瞼下垂と高度な上下斜視を呈し,重症筋無力症(myasthenia gravis: MG)が疑われたが,病原性自己抗体は陰性であり,神経筋接合部障害が明らかでなかった2例を経験したので報告する.

 症例1は60歳男性.半年前からの複視で当科を初診した.左眼瞼下垂と左上斜視,右眼の高度な上転制限と軽度外転制限,左眼の軽度下転制限と内転制限を認めた.反復刺激試験で眼輪筋に僅かなwaning現象を認めたが,ピリドスチグミン臭化物の内服は無効であった.胸腺腫はなく,プレドニゾロン内服のみで9か月後に複視は消失した.

 症例2は20歳男性.4か月前に複視を自覚し,前医でバセドウ病と胸腺腫がみつかり胸腺摘除術を受けたが,両眼の眼球突出と左眼瞼下垂,左上斜視と左眼の高度な下転制限が残存していた.MRIで外眼筋の肥厚はなく,日内変動,日差変動を認めたが,ピリドスチグミン臭化物,プレドニゾロン内服は無効であった.受診から約半年後に斜視手術を施行した.術中の眼球牽引試験は陰性であった.術後1年以上,日差変動を認めるも複視は消失している.2例とも神経支配と一致しない眼球運動制限を認め,MGの診断基準は満たさなかったが,臨床症状からは眼筋型MGと考えられた.

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