神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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40 巻, 1 号
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巻頭言
特集
原著
  • 平竹 純一朗, 木村 亜紀子, 増田 明子, 望月 嘉人, 五味 文
    2023 年 40 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル 認証あり

     2018年からの3年間に特発性眼窩炎症で受診中の患者13例(男性8例,女性5例,平均年齢45.3±19.4歳)の臨床上の特徴,治療予後について検討した.1例を除き片眼発症(92.3%)で,初診時6例(46.1%)が眼窩蜂巣炎として診断されていた.CRPは平均0.47±0.74 mg/dlで,外眼筋炎型が11例(84.6%)を占め,単筋のみの炎症が7例(63.6%)で最も多かった.罹患筋は外直筋7例で最も多く,上直筋4例,内直筋と下直筋がそれぞれ3例であった.眼球運動制限のパターンと発症から初診までの期間の関係では,麻痺型パターンの4例は17.0±14.1日,麻痺+拘縮型の2例は35.0±41.0日,拘縮型5例は93.0±115.0日と,発症後早期は麻痺型で,期間が延びると拘縮型に移行していた.ステロイド治療により全例で臨床症状の改善を認めたが,経過観察期間中2例(15.3%)がステロイド漸減中に再発した.後遺症は4例(30.8%)に認められ,3例に斜視,1例に視力障害が残存した.特発性眼窩炎症の特徴は,CRPが低値で,罹患筋が単筋(特に外直筋)であることがあげられた.

症例報告
  • 五十嵐 鎮秀, 増田 明子, 木村 亜紀子, 望月 嘉人, 五味 文
    2023 年 40 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル 認証あり

     片眼の眼瞼下垂と高度な上下斜視を呈し,重症筋無力症(myasthenia gravis: MG)が疑われたが,病原性自己抗体は陰性であり,神経筋接合部障害が明らかでなかった2例を経験したので報告する.

     症例1は60歳男性.半年前からの複視で当科を初診した.左眼瞼下垂と左上斜視,右眼の高度な上転制限と軽度外転制限,左眼の軽度下転制限と内転制限を認めた.反復刺激試験で眼輪筋に僅かなwaning現象を認めたが,ピリドスチグミン臭化物の内服は無効であった.胸腺腫はなく,プレドニゾロン内服のみで9か月後に複視は消失した.

     症例2は20歳男性.4か月前に複視を自覚し,前医でバセドウ病と胸腺腫がみつかり胸腺摘除術を受けたが,両眼の眼球突出と左眼瞼下垂,左上斜視と左眼の高度な下転制限が残存していた.MRIで外眼筋の肥厚はなく,日内変動,日差変動を認めたが,ピリドスチグミン臭化物,プレドニゾロン内服は無効であった.受診から約半年後に斜視手術を施行した.術中の眼球牽引試験は陰性であった.術後1年以上,日差変動を認めるも複視は消失している.2例とも神経支配と一致しない眼球運動制限を認め,MGの診断基準は満たさなかったが,臨床症状からは眼筋型MGと考えられた.

  • 佐浦 絢羽, 廣川 貴久, 柊山 友里恵, 戸成 匡宏, 奥 英弘
    2023 年 40 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル 認証あり

     エルドハイム・チェスター病(Erdheim-Chester disease,以降ECD)は組織球症の一種で,眼窩病変を生じることがある希少疾患である.ECDが疑われ,治療に抵抗し,両眼の失明に至った症例を経験した.症例は70歳女性.初診1週間前から左視力低下を自覚した.MRIで左側眼窩先端部に腫瘤性病変を認め,左視神経症と考えられた.数か月の経過で両側の眼窩炎から兎眼をきたした.両涙腺にも腫大を認め,涙腺生検を施行した.免疫組織学的には,組織球症の一つであるECDに矛盾しない結果であった.典型的なECDでは,対称性の骨皮質硬化病変やMAPK経路の遺伝子変異を認めることが多いが,本症例では認めなかった.眼窩以外の病変は現在認められないが,今後骨病変などが現れる可能性があり,注意深い経過観察が必要であると考えられた.

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