心臓
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症例
完全房室ブロックを伴う神経調節性失神の1例
軸丸 季美子篠原 徹二高橋 尚彦犀川 哲典吉松 博信
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1120-1125

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抄録

症例は13歳, 女性. 6歳時の心臓健診で第1度房室ブロックを指摘されたが症状なく経過観察されていた. 中学入学時の健診にて完全房室ブロックを指摘され, ホルター心電図検査中に腹痛が出現し, 失神. この際, 約15秒間の心停止(洞停止を伴う)が記録された. 冠動脈造影検査, 心臓超音波検査では器質的異常を示唆する所見はなかった. トレッドミル負荷試験では心拍数は速やかに上昇し, 第1度房室ブロックを呈した. 電気生理学的検査ではブロック部位はAHで, HV間隔, 洞結節回復時間および洞房伝導時間は正常であった. ヘッドアップチルト試験では, 開始10分後にめまいが出現し前失神状態となった. 収縮期血圧は60mmHg以下へ急激に低下し, 神経調節性失神と診断された. 以上より, 腹痛が誘因となって迷走神経刺激および交感神経抑制を生じ, 接合部補充調律抑制による心停止および血管拡張による血圧低下が脳虚血を引き起こし失神にいたったと考えられた. 起立調節訓練による治療を開始し, その後, 現在にいたるまで失神の再発はない. 電気生理学的検査とヘッドアップチルト試験により神経調節性失神と診断することができ, 起立調節訓練による治療により再発抑制に成功した完全房室ブロック例を経験したので報告する.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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