心臓
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症例
経皮的腸骨動脈形成術後に大動脈内バルーンパンピングを留置し, 緊急冠動脈バイパス術を施行した急性冠症候群の1例
平林 朋子森住 誠平崎 裕二土肥 善郎末松 義弘
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1126-1130

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抄録

症例は79歳, 男性. 陳旧性脳梗塞, 高血圧, 閉塞性動脈硬化症, 発作性心房細動, 肺気腫および脊柱管狭窄症などにて当院外来通院中であった. 2008年2月より労作時に胸痛が出現. 症状は徐々に増悪. 症状出現の2日後に突然背部痛が出現し, 当院救急外来受診. 急性冠症候群の診断にて, 緊急冠動脈造影施行. 以前, 当院外来で下肢閉塞性動脈硬化症 [足首上腕血圧比(ankle-brachial pressure index; ABPI): 右0.61, 左0.80] を指摘されており, 7カ月前のMRAでは両外腸骨動脈閉塞の所見を認め, 右橈骨動脈アプローチにて冠動脈造影を施行した. 結果は主幹部病変および三枝病変にて手術適応と考えられた. 血行動態の安定のため, 大動脈内バルーンパンピング(intra aortic balloon pumping; IABP) が必要と考えられたが, 同時に施行した大動脈造影では右外腸骨動脈100%の慢性完全閉塞, 左外腸骨動脈75+90%狭窄を認めたため, 緊急に経皮的腸骨動脈形成術施行を施行. 引き続いてIABPを留置し, 人工心肺補助下緊急冠動脈バイパス術を施行した. 経皮的腸骨動脈形成術後, 大動脈内バルーンパンピングを留置し緊急冠動脈バイパス術を施行した症例の報告は稀であるが, 冠動脈疾患患者は全身の動脈硬化を有していると考えられ, 下肢閉塞性動脈硬化症を合併していることも稀ではない. 今回われわれが経験した症例のように, 経皮的腸骨動脈形成術施行後にIABPを使用する症例は増加すると考えられるため, 考察を加えて報告する.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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