2009 年 41 巻 12 号 p. 1327-1331
症例は66歳,男性.小児麻痺にて小児期より松葉杖歩行を行っている.突然出現した左手のしびれ,疼痛のため入院.CTにて壁在血栓を伴った左上腕動脈瘤および同側上腕動脈遠位部の閉塞を認めた.左上腕動脈瘤内の血栓の一部が遊離し末梢に塞栓したと考えられ,Fogartyカテーテルによる血栓除去術を施行し症状は消失した.小児期より松葉杖歩行であり動脈瘤は松葉杖が接触する部位に一致しており,松葉杖の長期間の使用による慢性刺激により上腕動脈瘤を形成したものと推察した.松葉杖歩行を今後も継続しなければならないことを考えると血栓塞栓症の再発および動脈瘤の拡大および破裂のリスクは比較的高いと判断し上腕動脈瘤に対して手術を施行した.