心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床研究
90歳以上の急性心筋梗塞患者の臨床像と経皮的冠動脈形成術の効果
密岡 幹夫井上 直人伊藤 祐子大友 達志滝沢 要本多 卓秋山 英之鈴木 健之森 俊平青野 豪目黒 泰一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 41 巻 12 号 p. 1319-1326

詳細
抄録

目的:社会の高齢化が進み,高齢者の急性心筋梗塞を治療する機会も増加している.しかし,90歳以上の急性心筋梗塞患者の臨床像と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI) の効果については明確にされていないので検討する.
方法:2003年4月から2008年2月の間に入院した急性心筋梗塞1,275例を対象とした.90歳以上群37例と90歳未満群1,238例に分けて患者背景,治療,院内予後を比較した.PCIを含めて予後に影響する因子も検討した.
結果:90歳以上群では男性が少なく,高脂血症・喫煙歴も少なかった.来院時にKillip分類III以上である割合は有意に高かった.PCIを実施した割合は有意に低かったが(81.1% vs 94.6%,p=0.004) ,成功率には有意差はなかった.合併症は心原性ショック,心不全,重症不整脈,出血が有意に多く,死亡率も有意に高かった(29.7% vs 6.1%,p<0.001) .90歳以上群のみで単変量解析したところ有意差は認められなかったが,PCIの成功は生存を予測する傾向があった(オッズ比0.400,p=0.334) .
結語:90歳以上群では冠危険因子は少ないが入院時からすでに重症度が高く合併症の出現頻度や死亡率も高い.PCIが実施された割合は低かったが,成功率は同等で,PCIに成功した患者の院内予後は良い傾向にあり,90歳以上の急性心筋梗塞患者にもPCIを検討しても良いと思われた.

著者関連情報
© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top