心臓
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症例
右肩甲軟部組織原発悪性線維性組織球症による肺腫瘍塞栓症の1例
大西 隆行加藤 信孝加藤 陽子中村 浩章小林 一士大西 祐子梅澤 滋男丹羽 明博松原 修
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2009 年 41 巻 12 号 p. 1333-1339

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抄録

症例は83歳,男性.主訴は呼吸困難.2002年右肩のしこりを訴え脂肪腫を疑われた.2007年9月同腫瘤の小児頭大への増大あり.MRIで脂肪肉腫や悪性線維性組織球症(malignant fibrous histiocytosis; MFH)を疑われ,当院整形外科にて治療方針検討中であった.同年11月上旬呼吸困難にて当院救急外来受診.心エコーやCTにて,右心負荷所見を伴う広範な肺塞栓症と診断され入院.ヘパリンやワルファリン,tPAによる抗凝固線溶療法にて徐々に改善し,第14病日に退院.Dダイマーも入院時10.46µg/mLから退院時1.54µg/mLまで低下した.以後ワルファリンによる外来治療を継続していたが,労作時の息切れが続き,2007年12月末から症状増悪し,2008年1月上旬低酸素血症増悪にて再入院.CTで前回同様広範な肺塞栓所見あるも,ワルファリンはPT-INR 3.07と有効域にあり,Dダイマーも1.58µg/mLと著増なしであった.まずヘパリン,ウロキナーゼによる抗凝固線溶療法を開始するも呼吸困難の改善は得られず,塞栓源として血栓以外に腫瘍塞栓が疑われた.腫瘤による右上肢痛に対するモルヒネ投与にて除痛や呼吸苦の改善あるも,全身状態増悪し同年4月上旬に永眠.病理診断では右肩甲上部軟部組織原発のpleomorphic MFH,上大静脈内腫瘍血栓,右心房内・右心室内腫瘍血栓と広範な肺動脈腫瘍塞栓症であった.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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