抄録
症例はもともと普段からよく運動を行っていた66歳, 男性. 今年4月に開催された市民マラソンに参加したが, 15kmコースのゴール付近で突然倒れ, 心肺停止状態となった. バイスタンダーおよび医療班により心肺蘇生法 (CPR) を施行. 自動体外式除細動器 (AED) を装着したところ心室細動が確認され, ショック1回で除細動成功. その後すぐに心拍再開し近医から当院へ搬送となった. 心エコーでの壁運動は良好であったが, 心電図でV5, 6のST低下, 軽度のトロポニン上昇より心筋虚血の関与が示唆され, 冠動脈造影検査を施行. 左冠動脈前下行枝 (LAD) 近位部seg6, 対角枝seg9に90%狭窄, 左冠動脈回旋枝 (LCX) 鈍角枝seg12, 後側壁枝seg14にも90%狭窄を認めた. 心肺停止の原因として心筋虚血により心室細動が引き起こされた可能性が最も考えられたため, 責任病変と思われるLADおよびLCXに対してステント留置術を行い, いずれも良好な拡張が得られた. しかし, 血行再建後のトレッドミル試験で心筋虚血が残存していると考えられること, MRIの検査結果から致死性不整脈の器質となりうる梗塞巣が存在していると考えられることから, ICD植え込みの適応か判断に難渋したが, ご本人が希望されたこともあり, ICD植え込みを行った後に退院となった.