抄録
症例は77歳, 女性. 2006年12月ころより心不全症状があり, 近医で加療を受けるも, 心不全は寛解と増悪を繰り返し, コントロールが困難となったため, 当院へ転院となった. 当院入院時の心電図では完全左脚ブロックを認め, 心エコーでは左室壁運動の著明な低下 (EF=19%), 組織ドプラでは左室壁運動のdyssynchronyを認めていた. モニター心電図にて10連発の非持続性心室頻拍も認めていたことから, 除細動器機能付き両心室ペースメーカー (CRT-D) の適応と判断し, CRTDの植え込みを行った. 術後は心不全の著明な改善を認めていたが, 術後5日目に突然, 心室細動を生じ, CRT-Dが作動し, 洞調律となった. 今回, われわれはCRT-D植え込み後に初めての心室細動を生じた拡張型心筋症の1例を経験した. 両心室ペースメーカー適応例ではCRT-Dの方が不整脈突然死を回避でき, 予後の改善が期待できると考えられた.