2009 年 41 巻 SUPPL.3 号 p. S3_5-S3_10
症例は22歳, 男性. 既往歴, 突然死の家族歴ともになし. 大学構内でアメリカン・フットボール中に意識消失し当院救急搬送となった. 初診時, 心室細動 (VF) による心肺停止状態であり, 自動体外除細動器 (AED) にて蘇生された. 明らかな頭部病変なし. 全身集中管理により後遺症なく回復した. 心電図・心エコーとも正常. T-wave alterans (TWA) は陰性ながらlate potentia (l LP, SAECG) は陽性を示した. 電気生理学的検査では右室流出路で一部に低電位領域を認めたが, 持続性心室性不整脈は誘発されず. 原因として心臓震盪 (commotio cordis) をはじめ不整脈原性右室心筋症や特発性VFなどが考慮されたが, 器質的心疾患を完全には否定しきれない状況および本人・家族の意向も加味して植込み型除細動器 (ICD) 移植術を行った. 外来での経過観察中に数回ICD正常作動あり. 本症例はICD適応検討や運動場へのAED設置, 競技関係者の心肺蘇生普及にあたり示唆的と考え報告する.