心臓
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第21回 臨床不整脈研究会
Paradoxicalなpara-Hisian pacing所見を呈した房室結節リエントリー性頻拍の1例
宮本 美穂子荻ノ沢 泰司小和瀬 晋弥杉安 愛子窪田 彰一黒崎 健司野上 昭彦
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2009 年 41 巻 SUPPL.4 号 p. S4_27-S4_33

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抄録
 症例は47歳, 女性. 主訴は動悸. 電気生理検査で房室結節二重伝導路の存在が確認されたが, 頻拍発作は誘発されなかった. 心室刺激中にはHis束領域を最早期とする逆伝導を認めたが, 減衰伝導特性は不明瞭であった. そこで中隔副伝導路との鑑別のため, para-Hisian pacingを施行した. 刺激出力の変化によりnarrow QRSとwide QRS波形が得られたが, その際のS-A時間 (刺激から心房興奮までの時間) は不変であった. しかし, narrow QRS波形は刺激が心室を捕捉せずHis束のみを捕捉したpure Hisian pacingによるもの, wide QRS波形はHis束および心室を同時に捕捉したpara-Hisian pacingによるものであり, そのためS-A時間が同じになったと考えられた. わずかに刺激部位を変え, 再度para-Hisian pacingを行うと, wideなQRS波形 (His束および心室を捕捉) とさらにwideなQRS波形 (心室のみを捕捉) が得られ, S-A時間の延長が認められた. Isoproterenol投与中に頻拍が誘発され, 通常型房室結節リエントリー性頻拍と診断されたため, 遅伝導路領域を焼灼した. Para-Hisian pacingは中隔副伝導路の鑑別に有用であるが, 心室を捕捉せずHis束のみを捕捉した場合 (pure-Hisian pacing) には, 中隔副伝導路がなくても, narrowおよびwide QRS波形でS-A時間が一定となることがあるため, 注意を要する.
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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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