心臓
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症例
僧帽弁置換術および三尖弁形成術後にPCPS離脱に成功し救命し得た劇症型たこつぼ心筋症の1例
星山 行基川野 成夫山口 裕己田原 聰子雨池 典子丹野 巡多田 英司角田 修栗田 直幸中村 勝太郎朴澤 耕治岩佐 篤中村 淳
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2010 年 42 巻 1 号 p. 98-103

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抄録
症例は, 特記すべき既往歴のない77歳, 女性. 自宅で階段から滑り落ち倒れているところを家族に発見され, 近医を受診した際の心電図でST上昇を認め, 急性心筋梗塞を疑われ当院へ紹介となった. 冠動脈造影では器質的狭窄を認めず, 左室造影の所見よりたこつぼ心筋症と診断した. 翌日になっても輸液負荷やカテコラミンに反応せずショック状態が遷延し, 血清心筋逸脱酵素の異常高値や心電図上で著明なST上昇を認めたことから広汎な心筋障害を伴う病態と判断し同日IABPを挿入した. その後も循環動態は改善せず, 入院3日目に人工呼吸およびPCPSによる呼吸循環管理を開始した. PCPS開始後より循環動態は安定したが, 回路の流量を低下させカテコラミンを増量して血圧維持を図ると僧帽弁および三尖弁逆流, 左室流出路狭窄の増悪から血行動態をさらに悪化させるという病態が持続した. 内科的治療のみではPCPSの離脱は困難と考え, 入院7日目に僧帽弁置換術および三尖弁形成術を行ったところ血行動態は改善し術直後にPCPSの離脱に成功した. その後IABPや人工呼吸器からの離脱にも成功し, 最終的には自力歩行可能となった.
通常たこつぼ心筋症では良好な転帰をたどるが, 本症例のように心原性ショックが遷延する場合には発症早期から機械的循環補助を行い, 左室の構造変化による重症MRや流出路狭窄を認めた場合には時期を逸せずに弁の修復術を行うことが救命につながるものと考えられる.
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© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
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